[084-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(79):米国心臓協会が注目するIDの6要素~質の高い学習機会を提供するという責務2~

ヒゲ講師は令和最初の公開講座(応用編)で受講者とのやり取りを楽しんでいた。リハーサルなしのぶっつけ本番で様々な角度から飛んでくる質問の矢をさばく時間は、緊張感もあり達成感もあり、とても楽しいものだ。大阪会場での質問に対して「その答えは次のヒゲ講師の連載に書きますのでIDマガジンをお楽しみに」と答えた。そのあとで気づいてしまった。それって、もうすでに書いたネタだった!
という訳で仕切り直し。書くと宣言したのはエリクソンのデリバレート・プラクティス。アウトプットが大事、練習の方法をしっかり考えるのが大事、でもどうやって練習するのが効果的で効率的なのか。その答えが5つにまとまっている。すでに書いたのは昨年3月発行の[078-02]【連載74】でそのタイトルは「限界的練習の5原則~質の高い学習機会を提供するという責務~」(http://idportal.gsis.kumamoto-u.ac.jp/?page_id=55&cat=32&n=19797)。人間は忘れる動物ですね。Use it or lose it(使っていないと忘れます)を自ら露呈してしまいました。
そこで今回は、連載74との関連が分かるように「質の高い学習機会の提供2」と副題をつけて、米国心臓協会(AHA)が注目するIDの6要素を詳しく紹介する。AHAは、古くからIDに着目して心肺蘇生術の訓練やそのトレーナー研修などを提供してきた。しかし、心停止後生存率の低下改善に結びついていない現状を分析した報告書を発表し、その中でIDの要素として着目すべき視点を6つ挙げた。心肺蘇生法の話だから、手順の知識だけでなく、状況を判断しながら身体を動かして行う知的技能と運動技能が関係している。そういう特徴をもつ領域での研修の見直しには、参考になると思います。
■AHAが着目するIDの6要素■
要素1:完全習得学習と熟慮された練習(deliberate practice)
スキルの自動化が達成できるレベルまで完全に習得することを目指し,ただ闇雲に回数を重ねるのではなく,実力が向上するように周到にデザインされた練習を組み入れること.コンフォートゾーン(居心地の良い領域:すでにできること)にとどまらずに常に集中と新たな学習が求められる少し高いレベルで,できないことに焦点化し,指導者からの助言がタイムリーに得られる環境で練習すること.
要素2:フィードバックとデブリーフィング
練習中の指導者からの適切でタイムリーなフィードバックと練習後の振り返り(デブリーフィング)は効果的な教育に不可欠である.学習目標に合致したチェックリストを用いて簡潔に行い,学習者の自尊感情や自己意識との葛藤を脅かすコメントを避ける.失敗事例では,早期に再練習する場を作り,その学習者が成功するのを確認するとよい.
要素3:反復練習(spaced practice)
一度だけのまとめての練習(massed practice)に対して,間隔を開けて長期間にわたり繰り返して行う練習のこと.分散練習(distributed practice)ともいう.日常的に活用する機会が少ない学習成果は,成果が減衰する前のタイミングで復習の機会を設け,長期間に及ぶ学習成果の維持を確保すること.一方で,反復練習は,コスト増や学習者の疲労にも繋がり,評価場面が増えると,学習者が自信を失う可能性もあることには留意が必要.
要素4:革新的な教育方略
採用することで教育活動の向上が見込まれる方略を適切に取り入れること.たとえば,ゲーミフィケーション(ゲーム化),ソーシャルメディア,ブログやポッドキャスト,クラウドソーシングがある.用途を厳選し,コストを考慮し,科学的根拠が乏しい手法を採用する際にはデータ収集を並行して行うこと.
要素5:文脈学習
一般的な文脈ではなく学習者が実際に遭遇する文脈で学習する機会を与えること.訓練で用いる対象やツール・環境などを学習者の文脈に合致させることが,訓練のやりがいを高め,職場でのパフォーマンスの最大化につながる.疑似的環境と現場での訓練にもチーム訓練を取り入れ,専門職・一般人向け訓練を区別し,安全やプライバシーに配慮し,ストレスや認知的負荷を与えすぎないようにすること.
要素6:評価(アセスメント)
筆記や実技を含む適切な形式を用い,直接観察や振り返りで視聴するビデオや補助者や訓練装置の記録から得るデータも活用すること.評価の質を常に高く維持し,訓練中の早期に困難を抱えている学習者を同定・支援し,知識やスキルの応用力を多様な評価方法を採用して把握する.また,訓練終了後の職場での行動把握や学習者の職能・職責に適した評価を行うこと.
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注:Cheng, et.al(2018)を表形式にまとめたもの.初出は鈴木(2019).AHA訳では,deliberate practiceの訳語には「熟慮された練習」ではなく「集中的練習」 があてられている.「集中的練習」という訳語は要素3の反復練習(間をおいて複数回練習すること)に反して一気にやるのが良いと誤解されかねないので要注意.エリクソンの著作の訳本では「限界的練習」という用語が使われているが、同じものを指している。
出典:鈴木克明(2019)インストラクショナルデザイン:学びの「効果・効率・効果」の向上を目指した技法.電子情報通信学会通信ソサイエティマガジン,50(秋号):110-116 [Available online] https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/13/2/13_110/_pdf
(ヒゲ講師記す)


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