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IDマガジン第10号 (2005/4/22発行)


[010-04]HRD JAPANに見るeラーニング ~eラーニングの変遷について考える~

2月7日(月)~2月10日(木)に日本能率協会主催の「HRD JAPAN2005第24回能力開発総合大会」が開催されました。 HRD JAPAN 能力開発総合大会(以下 HRD JAPAN)とはどのような大会かというと、「経営課題を達成する一助として、各企業の人事・教育スタッフをはじめ、経営トップ、学術者、専門家の方々を迎え、企業の組織・人事、人材開発の方向性や戦略について情報交流をはかり、人を基軸とした経営革新の推進を目的」(HRD JAPAN2005 第24回能力開発総合大会ホームページより)とした大会です。私も、2月10日(木)のeラーニングセッションに参加しましたので、大会の感想とともにHRD JAPANにおけるeラーニングの変遷について考えてみたいと思います。

まず、今回のHRD JAPANの感想です。
今年のHRD JAPAN でのeラーニングセッションは、なんと2セッションでした。
セッション1は会場の5割程度の入りで、セッション2が7割程度の入りでした。ま
た、過去の大会に較べ、全体的に活気がなかったのが印象的でした。以下が発表の要
旨です。

●セッション1:『eラーニングの有効活用-1-』
[1] e-learningによるJALグループ全社員に対するコンプライアンス教育について~株式会社日本航空~
eラーニングを活用し、グループ会社も含めた約48,000名に対するコンプライアンス教育を行った旨の報告でした。
WBTで学習できない者に対しては、VHSやCDRを配布し、集団視聴をさせるということで徹底したそうです。アンケートの結果も良好で、とりあえずはeラーニングの効果があったということでした。この発表で面白かったのは、運用を各セグメントに主管させたことです。これが効を奏し、各セグメントの自立的学習が進んだものと考えられます。メンター、チューターの重要性を考えさせてくれる発表でした。

[2] コンピテンシ強化戦略を実現するeラーニングの展開~富士ゼロックス株式会社~
富士ゼロックスの技術者教育として、キャリア開発と人材配員の両面からコンピテンシ・マネジメントを行っている旨の報告でした。年一回、コンピテンシアセスメントを実施しその差異分析を行うことでコンピテンシ強化戦略を策定するしくみにしているようです。また、WBTと集合教育をシステムの上で融合させ、効果的なHRMを行っているとのことでした。満足度を測定したところ、集合研修に較べてWBTの方が評価が高かったとの報告がありました。
●セッション2:『eラーニングの有効活用-2-』
[3] e-Learningを活用した被評定者研修【評価の透明性・納得性向上への取り組
み】~東京電力株式会社~
従来行っていた評定者教育に、被評定者に対する教育をWBTで実施する事とした旨の報告でした。任意受講であるにも関わらず、8割を超える受講率に達したとのことで、これは驚異的な数値だと思います。人事考課という従業員の関心が高い内容であることがポイントだったのでしょう。従業員ニーズと会社の方針がマッチした好例だと思いました。

[4] e-Learningを活用したキャリア開発~日本電気通信システム株式会社~
従業員のエンプロイアビリティ向上のための「キャリア開発研修」にeラーニングを導入し、ブレンディング研修を実施している旨の報告でした。WBTに埋め込まれているワークとアセスメント結果を持ち寄り、集合研修でカウンセリングを実施しているそうです。受講者の満足度も高く、今後もeラーニングの効果的な活用を進めていきたいとのことでした。
●HRD JAPANにおけるeラーニングの変遷
私は2001年からHRD JAPANに参加しています。そこで、HRD JAPANにおいて、eラーニングの取扱いがどのように変遷しているか調査してみました。HRD JAPAN2001では、「教育マルチメディアのシステム・インフラ・技術」と「教育マルチメディアの活用状況」の2本立て8セッションが行われました。各セッションに約100名程度が参加しています。この大会では、2000年の「eラーニング元年」熱が残っており、かなり注目されていました。また、インストラクショナルデザインをテーマにとりあげた発表も2例ありました。

HRD JAPAN2002では、「教育マルチメディア大会」として、2会場8セッションが行われました。まだまだ、eラーニング熱は健在ですが、大会全体の聴講者が減少しており、前回に較べると参加者数は減っています。この大会では、インストラクショナルデザインについて触れてある発表は1例のみでした。

HRD JAPAN2003では、日本イーラーニングコンソシアムの企画セッションが加わっているためeラーニング関連セッションは10セッションと過去最多になっています。しかし、会場は1つになっており、実質的には減少傾向になっていると考えられます。インストラクショナルデザインについては、やはり1例で、これは「人材プランニング」セッションでした。

HRD JAPAN2004では、さらに減少傾向で、eラーニング関連セッションは6セッションとなっています。ただし、他のセッションでもeラーニングが取り上げられており、eラーニングが人材開発に根付いてきた印象がありました。この大会では、我らのヒゲ講師こと鈴木先生も出講し「e-ラーニング成功のツールとしてのIDモデル」というテーマで発表しております(実は、私も出講しました)。この大会では、インストラクショナルデザインについては、2例の発表がありました。

そして、今大会では、eラーニング関連セッションがついに2セッションまで減少しています。前大会では、他のセッションにおいてeラーニングの活用事例も発表されていました。しかし、今大会においては、eラーニングがキーワードとして出てくるセッションはあまりありません。これは、eラーニング離れが始まっているのか、それとも浸透したため表面に現れていないのか、どちらなのかは解りません。あるリサーチ会社が行った従業員数1000人以上の企業138社に対する調査によれば、eラーニングの導入率は5割を切っているようです。ただし、未導入企業においての関心は高いようで7割を超えています。決してeラーニングに見切りをつけているわけではなく、様子をうかがっているのだと思います。もし、「eラーニングが踊り場」であるとすれば、一気に駆け上がれるよう背中を押していきたいものです。そして、その背中を押す力がインストラクショナルデザインなのだと確信しています。

以上

(四国電力 総合研修所 小笠原)


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