トップIDマガジンバックナンバー > 第16号

idマガジンロゴ

IDマガジン第16号 (2008/5/3発行)


[016-03] <第1部:The MORE Model of Faculty Development>

熊本大学第14回eラーニング連続セミナーのプログラムの最初は
ウェィジャー先生(Walter Wagerフロリダ州立大学名誉教授)の講演でした。

「The MORE model for Faculty Development and Instructional Improvement」
の演題で(1)ファカルティ・デベロップメント(FD)について15の大学を
調査した結果と、それぞれの大学の特徴的な取り組みをベスト・プラクティス
として紹介しました。また、(2)この調査で明らかになった持続的なファカルティ・
デベロップメントの実施に必要な条件を表すモデルを提案しました。

(1)ファカルティ・デベロップメント調査結果
調査の対象とした大学は西部地区の(アリゾナ州立大学など)3校、中西部
地区の(ウィスコンシン大学など)6校、南東部の(ジョージア大学など)3校、
フロリダ州の(フロリダ大学など)3校、合計15校の大学を調査した結果を報告
しました。

調査で質問した項目「インストラクションに最もインパクトがあるFDプログラム
はどういうものですか」に対する回答から、それぞれの大学の取り組みを紹介して
頂きました。例えば、アリゾナ州立大学では次のような取り組みがなされていると
のことでした。

◆ 学習者中心の教育プログラム
教職員は学習者中心型のコースに改訂するために、給与のほかに月額1,000ドル
の助成金を得ている。また、その改訂結果を報告書にまとめ、ほかの学部や助成
金のスポンサーと共有できるようにしている。
◆ ルーキー・キャンプ
新人教職員は毎週2時間の講習会に6週間参加し、積極的学習(active learning)
を促進するための技術、方略、考え方を習得している。

15の大学のFDの取り組みを調査した結果を次のようにまとめていました。
◆ ある一つの大学のベスト・プラクティスが、そのまま自分の大学に適用できる
わけではない。
◆ 多くのベスト・プラクティスは、実施している側の思い入れがある。つまり、
実施している人は、成功させようとする気持ちが動機づけとなっている。
◆ ほとんどのベスト・プラクティスは指導と学習(teaching and learning)へ
の影響の観点からの評価がなされていない。
◆ 多くの大学ではFDの会合の出席率は低い。学生にとって図書館がリソースで
あるように、FDセンターは教職員のリソース・センターである。教職員が指導
方法について「これで十分」と感じているなら、これ以上のリソースを求めない。
◆ ベスト・プラクティスには次の四つの特徴を伴う:動機づけ(Motivation)、
機会(Opportunity)、リソース(Resources)、評価(Evaluation)。

ウェィジャー先生が調査した15の大学の情報をまとめた報告書が公開されて
います:
この報告書に、調査した15の大学の情報も記載されています。
http://mailer.fsu.edu/~wwager/sabreport.doc

(2)FDモデルの提案(MORE model)
ウェイジャー先生は、ファカルティ・デベロップメントを実践している大学調査
の結果、持続的な変革の条件を表すモデル(MORE model)を提案しました。
これらは、次の4つの条件でした。

動機づけ(Motivation): 教職員が効果的な指導ができるように改善につとめる
動機づけ。すばらしい授業をした教職員に対する報奨金はあるが、その額も頻度も
少なく、授業の質を高める動機づけにはなっていない。

機会(Opportunity): 指導方法を改善するために必要な機会。動機づけが高く
ても、教職員はあまりに忙しく、教材開発する時間がない。機会とは、教職員が
指導方法を学ぶためのいかに時間をすごすかということである。

リソース(Resources): 動機づけが高く、機会も与えられていても、教職員は
指導方法を改善するための支援を必要としている。リソースとは、指導方法の改善
を支援するFDセンターのスタッフ、教材、機材などである。

評価(Evaluation): FDセンターという組織は高価なリソースであるのだから、
その組織の貢献度を測る意味でも評価は必要である。また、学習の効果を測定し、
効果のある指導を行ったかどうかを判断する必要がある。

最後の質疑ではウェイジャー先生がまず「100万ドルあると『動機づけ』『機会』『リ
ソース』『評価』のどれに投入するか」という質問を投げかけ、フロアから意見を求
めました。フロアからは「最も重要な『動機づけ』に投入する」「いや『機会』が大
事だ」など意見がでました。また「100万ドルの半分を動機づけに投入し、残り半
分を適当に分配する」など投入方法の観点からの意見もでて、活発な質疑となりま
した。

MORE model の報告書が公開されています:
持続的なファカルティ・デベロップメントのための4つの条件から着想を得た
MORE modelが詳しく述べられています。
http://mailer.fsu.edu/~wwager/more%20model.doc

IDの第一人者ウェィジャー先生と直接話すことができてとても感激しました。
これからIDに関わる仕事に取り組む気持ちを新たにしています。

徳村朝昭
(財)日本国際協力センター沖縄支所


IDマガジン購読

現在 675 名の方がIDマガジンを購読中です。 定期購読ご希望の方はメールアドレスを登録してください。


登録後、確認メールが届かない場合「迷惑メール」となっている可能性があります。「id_magazineあっとml.gsis.kumamoto-u.ac.jp」と「idportalあっとml.gsis.kumamoto-u.ac.jp」を迷惑メールから除外して再度登録ください。←「あっと」は「@」に置換え。

おすすめ情報

教授システム学専攻の公開科目でIDの基礎を学習できます。おすすめ科目は以下です。
・基盤的教育論
・eラーニング概論