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IDマガジン第16号 (2008/5/3発行)


[016-04] <第2部:What Makes e3 (effective, efficient, engaging) Instruction?>

4/22に熊本大学で開催された2人の巨匠をお迎えした第14回ラーニング連続
セミナーは,IDに携わるものにとっては,夢のような企画でした.ここでは,
メリル先生の講演内容を(すべてとはいきませんが)報告します.

メリル先生は,米国ブリンガムヤング大学ハワイ校の教授であり,古くから
ID研究に大変貢献してこられた巨匠のお一人です.今回が初来日!で,5日間
という短い滞在期間の中で,熊本のみのご講演ということでした.筆者はメリ
ル先生の研究に以前から大変興味があり,このチャンスを逃すわけにはいかな
いと,岩手から熊本に駆けつけました.実際にお会いすると,とても大柄で
(180cmくらいでしょうか),存在感のある方でした.

講演のタイトルは,”What Makes e3 (effective, efficient, engaging)
Instruction?”であり,教育をより効果的で,効率的で,魅力ある(注:
engagingは課題解決に実際に携わらせるという意味かもしれません)ものにす
るための方法として,課題中心(task-centered / problem-centered)のアプ
ローチをとりあげていました.その中でも特に, ID第一原理(First
Principles of Instruction)について詳しく紹介されました.ID第一原理は,
IDマガジン第10号で紹介されておりますので,詳細は述べませんが,近年の構
成主義的なIDモデルに共通の特徴を,課題中心(Task-centered),活性化
(Activation),例示(Demonstration),応用(Application),統合
(Integration)という5つの原理にまとめたものです.

また,課題中心の教授方略として,まず課題全体(最も単純なもの)を示し,
その課題に必要なスキル等を教えて,実際に課題解決を例示し,次にもう少し
複雑な新しい課題を提示して,前に学んだことを適用させ,追加で必要なスキ
ル等を教え,例示するといったサイクルが(図で)示されました.これは従来
の探索および発見的な問題解決型の学習と比べ,解決過程を例示することや,
直接的に必要なスキルを教えるなど,より構造化された方略となっています.
単純から複雑へという考え方は,ライゲルースの精緻化理論(IDマガジン第6
号で紹介)のSCM(Simplifying Conditions Method)を知っているとイメージし
やすいかもしれません.

さらに,Pebble-in-the-Pondという,池に石を投げ入れることで波紋が広が
る様子になぞらえたIDプロセスモデルも紹介されました.これは,池に投げ入
れる石に相当する課題(問題)を最初に考え,そこから広がる波紋として,よ
り複雑な課題の検討,それらの課題に必要なスキル等の検討,方略の検討…の
ように進めていくプロセスです.従来のIDプロセスモデルは学習目標の特定な
どを最初に行いますが,まず実世界で起こりうる課題(内容)を最初に考える
ことから始めるというところが特徴的です(content-first approach).

質疑はかなり長時間に及び,例えば基礎的な内容を学習させるために,ID第
一原理(課題中心の教授方略)をどのように適用すればよいのかという問いに,
どんな内容であっても,とにかく実世界の課題に落とし込む(例えば,学習者
の人生との関わりで考えてみる等)ことが大切であると回答されていました.

講演後には,筆者が現在研究中の教授トランザクション理論(IDマガジン第
5号で紹介)について,メリル先生に個別に質問に行き(鈴木先生に英語は助
けて頂きながら),とても丁寧にお答え頂きました.メリル先生とのつながり
もでき,研究に対するモチベーションもあがり,大変有意義なセミナー参加と
なりました.

なお,メリル先生のサイトには上記の内容も関連した論文が多数公開されて
います:http://cito.byuh.edu/merrill/

(岩手県立大学 市川尚)


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