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IDマガジン第18号 (2008/8/14発行)


[018-04] 【報告】アメリカ取材@PSU(ペンシルベニア州立大学訪問記)その2

■バーバラ・グラボウスキー教授(Barbara Brabowski)
バーバラは、ペンシルベニア州立大学(PSU)教授システム学専攻の古参教授の一人で間もなく定年を迎える。PSU出身で長くここで教鞭をとってきた。量的研究法を担当し、長年「修了生の質を担保することに貢献してきた人物(藤本徹氏談)」。現在、ibstpiの理事代表を務め、訪問中にibstpiについても打合せ昼食会を持った。最終日には隣接専攻に所属する二人の大物教授(Profs. Rothwell & Moore)との面談や、遠隔教育部門訪問をセッティングしてもらった。

注記:バーバラは8月19日に初来日し、各地での講演が予定されている。
・8月20日(水)日本医療教授システム学会主催・講演会
(国際医療センターhttp://www.imcj.go.jp/
http://www.simclub.jp/modules/bulletin/article.php?storyid=31
・8月26日(火)ICoME2008(関西大学高槻キャンパス)
http://icome2008.ict-education.org/japanese/index-jpn.htm
・8月29日(金)第15回eラーニング連続セミナー(熊本大学)
http://el-lects.kumamoto-u.ac.jp/

■PSUが学習科学者2名を2002年に雇用してからの変化
1970年代に教授システム学の研究者として育った頃から、行動主義の限界を感じ、頭の中に起きていることに注目してきた。メディアの専門家ではなくシステムの専門家となることを心がけ、PLATO(インターネットゼロと呼びたいと思っている)を用いた研修システムの設計・開発に当たっていた。当時の新しいメディアをツールとして使い、学習のために何ができるか模索していた。

当時から新しいメディアに興味を持ってきたが、このクリスマスにiPhoneを夫からプレゼントされたときに、かつてからのメディアへの興味が再び呼び覚まされた。iPhoneによって自身の生活に変化が生まれ、1970年代後半に感じていたかつての興奮が蘇り、このメディアの変化で何が持たされるか、ユビキタスコンピューティングなどの新しい可能性で何ができるか、久しぶりに楽しみになった。

教授システム学の成果として、たとえばARCSモデルなどたくさん学ぶべきことはある。一方で、構成主義の考え方など、これまでの考え方に挑戦し、学習者の役割を見直し、何か違う考え方で新しいタイプの技術を利用できないか、と我々にチャレンジすることを迫っていると感じている。

PSUの修了生が何をする(何が出来るようになっている)ことが求められるか。その点がこの専攻で起きている変化を見るときに、重要な視点だ。学習科学の要素を取り入れてきた専攻の変化は歓迎すべきものだと思う。PSUの教授システム学専攻にずっと育ってきた哲学は、創設者ポール・ウィーバー(自身の指導教員)によってスタートした「その時代のテクノロジーと教育心理学の考え方を統合する」というものだった。PSUの修了者には、理論を理解し、戦略的なプロセス(学習ニーズの分析を含む)をマスターしていることが求められてきた。テクノロジーの専門家になるのではなく、プロトタイプを作って技術専門家と会話ができる程度になることを目指していた(当時はテレビ番組の製作)。その後、理論がより重視され、テクノロジーに手を染めることが少し疎かにされてきたと思っている。学習科学者の追加によって、テクノロジーのハンズオン経験がまた重要視されるようになった。

IDの各ステップでやらなければならないことは今も昔も変わらない。(数々の批判はあったが)IDはいつの日も直線的なプロセスではなかった、と私は思っている。学習科学者はテクノロジーの領域でのすばらしいスキルをこの専攻に持ち込んできた。もはや自分自身ではついていけない今日のテクノロジーの第一線のスキルを提供してくれている。「Design Studio」(新設科目名)はその好例だ。テレビ番組制作が当時の最先端であったのと同じように学生たちが今日の最先端テクノロジーに触れる機会を持つことは重要だ。一方で、学生たちに、コンピュータ科学の最先端レベルのスキルを身につけさせることを期待するのは行き過ぎだと思っている。そういう観点から、修了者に期待されるスキルセットをしっかり定義する必要性を感じている。

学習科学者によってもたらされた最大の恩恵は、理論でもプロセスでもなく、テクノロジーだと思っている。理論を活用できることは重要な要素であり、基礎だというのが本専攻の哲学である。その当時、映像技術の専門家が専攻に所属しており、その人たちのおかげでテクノロジーの活用についての経験を与えることができた。それと同様に、現在我々のチームにいる学習科学者によって、今日の最先端技術についての経験を学生に与えることができている。

(このインタビュー結果のまとめはヒゲ講師が担当した)


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・基盤的教育論
・eラーニング概論