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IDマガジン第2号 (2004/6/30発行)


[002-03]音の効果とeラーニングデザイン~五感のひとつを探る

6月後半のある日、岩手県立大学のメディア論にNHKエデュケーショナルの箕輪氏を特別講師として招いた。
講演タイトルは、「番組はこうして作る -効果音のデザイン-」。番組作成での音の効果について分かりやすく説明頂いた。学生にとっては現場の声が聞けた貴重な時間だったと思う。

番組作成に用いる音の種類には、(1)状況や環境の理解/自然音/状況の雰囲気をあらわすために用いる「実音(REAL)」、(2)注意を引いたり、感情を増幅させたりするために使う「効果音(EFECT)」、(3)印象を深めたり、テーマ音楽に使用する「音楽(MUSIC)」の三種類があるそうだ。講義の中に、学生が音響プロデューサーとして「ある10分間の小学生向け番組にどのように効果音を入れると魅力ある番組にできるか?」というクイズが出された。効果音を入れた場合とない場合の同じ内容のビデオを二種類見せて比較させるのだ。なるほど、ちょっとした音がこんなにも魅力を高めるのに役立つのか。と実感できたに違いない。最後に、「どこに音をつけるかよりも、どこに音をつけないかが、音響デザイナーのプロの仕事」(音を効果的に活かすためには、無音のところがあったほうが、より音を際立たせることができる) と言われていたことが印象的だった。

最近のeラーニングコンテンツは、動画もふんだんに使われおり、ナレーションも入っているものが多くある。逆に言うと、動きはあって当然だし、ナレーションを含めた音声データが無ければ貧素なものと思われる可能性がある。はたして、音声は効果的なコンテンツ作成に必須なのだろうか。
“e-Learning and the Science of Instruction”(Clark&Mayer,2003)という本の中に、「重複理論:画面と音声に両方に、同じ説明文を使用しない」というデザイン原則がある。
情報伝達理論から考えれば、画面と音声両方から情報が提供されたほうがより深く学習することができる。しかし、認知心理学に基づき考えると、画面に画像と説明文、そしてナレーションが入ったコンテンツで学習をすることは逆効果に成り得るというのだ。

上記のようなeラーニング教材で学習すると、目という感覚記憶には画像と説明文の二つの情報が入り、耳という感覚記憶にはナレーションが入ってくる。目から入った記憶は同じ作業記憶領域を使うことになる。もし、学習者にはその説明速度が早く、なじみが無いものだったりすると学習者が、目というチャネルの過負荷を感じるというのだ。
また、同じ内容のコンテンツを被験者に見せた場合どれぐらい記憶に残るか二つのグループを設けて実験した結果が記載されている。画像・説明文・ナレーション付のプレゼンテーションを見るグループAと、画像・ナレーションのみのプレゼンゼンテーションを見せたグループBを比較したところ、グループBのほうが応用問題の実施結果でグループAより43-69%高得点を記録した。

“just in time” という言葉もよく用いられ、今ではよくある言葉の一つになりつつあるが、必要な時に必要なものだけ提供する、すなわち”just enough information”これができるのがIDのプロかななんて考えた。テレビ番組の音響プロデューサーと同様に「音をつけないことができるプロ」と言うことだろうか。


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