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IDマガジン第20号 (2009/7/23発行)


[020-05]【報告】e学習理論研究会@北九州に参加して

教育メディア学会研究会と同じ日に「e学習理論研究会」が北九州市小倉で開催された。大阪府立大学主催、福岡看護eラーニング研究会主管の看護教育に従事する教育者・実践者を中心とした研究会である。今回初めて本研究会に参加させて頂いたが、看護や医学教育にeラーニングを積極的に取り入れようとする姿勢と情熱が伝わってくる研究会であった。本研究会は4つの発表と早稲田大学の向後先生による特別講演で構成されていたが、そのうち紙面の関係上、向後先生のご講演「eラーニングを効果的に構築・運営する方法」について簡単に紹介したい。

■早稲田大学eスクールでの実践
ご存知の通り、早稲田大学人間科学部では通学生と同じ学習内容をeスクールにて学ぶことができる。毎年約200名の学生が入学されているそうだ。オンラインで通学生と同じカリキュラムが提供されているところが魅力的であるが、人気のプログラムであるため、簡単に入学できないところがまたにくい。VOD講義・単元テストで構成される授業は、科目ごとにTAが配置され、授業が円滑に進むような支援が行われている。単元テストは自動化されているが、記述式の部分はTAが中心となり採点する。加えて、学習者が感想や質問を書いて提出される「レビューシート」には教員とTAがアクセスし、返信する仕組みを作っているようである。このように教員→学生への一方向型になりやすいVOD講義と併せた工夫がされている。

■3年サイクルモデル
教員は通学生とeスクール両方の授業を担当するため、負荷を減らさないと、継続的な実施は難しい。これまでのeスクールでの実践や知見を踏まえ、向後先生は「3年サイクルモデル」を提案している。これは3年かけて教材を開発するモデルで、1年目:スライド作成+レクチャー収録、2年目:収録したものからテキストを作成、そして3年目:テストと解説などを追加して独習書を作るという3ステップで構成されている。最初から「冊子を作ろう」と意気込みすぎると、1年で完成できない場合が多いので、1年目ではまずビデオを撮影し、2年目は1年目のビデオをTAに文字に起こさせ、教員がそれを修正しテキストを完成させ、3年目には2年目のテキストにテストを加えるというアイディア。現実的な提案である。

■eラーニングモデルの展望と向後先生の新たな挑戦
次のステップとして、向後先生は、「知識の習得」「知識の吟味」「知識の応用」の学習3プロセスを支援するeラーニングを実現したいそうだ。3年サイクルモデルで仕上がったのテキストやコンテンツを「知識の習得」に活用し、BBSで質疑・議論「知識の吟味」をさせ、そして「知識の応用」を目指したプロジェクトや事例研究を行うものである。これにはTA・メンター・教員が適切に介入することで学習効果を上げ、さらに支援側の負担も減らそうということも含まれている。また、eラーニングのみの利用だけではなく、「3年サイクルモデル」を活用してブレンディング型授業として運用することも可能であるとのこと。実際、先生の魅力的な挑戦として、通学制の授業にもeラーニングを取り入れ、授業15回のうち7回を自己学習型のeラーニングで、残り半分をeラーニングで学んだ学習の応用に当たる議論や実習に費やす試みをされている。まだ実施段階のため、はっきりとした成果は出ていないが、手ごたえはあるらしい。成果報告が楽しみである。

最後の質疑の時間では、eスクールをビジネス的視点から見た質問や、ブレンディングの授業としてeラーニングを活用するためのハードルや不安についてのコメントなど多くのやり取りがあった。授業実施の制約の中で、それぞれが乗り越えなければいけない壁をどのように突破できるか心配しながらも、向後先生が提案する3年モデルやブレンディング型授業を、なんとか応用したいという関心の現われだったと思う。

(熊本大学大学院 根本 淳子)


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