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IDマガジン第28号 (2010/4/5発行)


[028-04] 【報告】教授システム学専攻大学院GP最終成果報告会・報告記

教授システム学専攻へのStory Centered Curriculum(SCC)導入に取り組んだ、熊本大学における小生の2年間が終わった。SCCとは、複数科目に共通する実践的応用場面のシナリオを想定し、並行履修する各科目をそれに関連付けることで、より高い実践力と理論的知識の血肉化を促そうとする統合的なカリキュラムである。

3/12(金)、本専攻が文科省の大学院教育改革支援プログラム(大学院GP)に採択されて、平成19年度から3年間取り組んだ「IT時代の教育イノベーター育成プログラム」に関する最終成果報告会が東京で行われた(参照:http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/gp/)。このプロジェクトはSCCの導入を含む4つのサブ・プロジェクトから構成されており、3年間のうち、実際にSCCを運用する2年目からSCC専任の研究員として着任した小生が、この報告会のSCC部分の発表を担当した。前述のリンクから辿ることができる平成21年度の報告書内には、当日用いたスライドもあるので、興味がある方は参照されたい。

“eラーニングでeラーニング専門家を養成する”本専攻では、学習者を、eラーニングの開発・販売を行うMTM社なる企業に中途入社した新人社員と設定し、上司からの指示を受けながら、社内や関連企業と取引するなかで業務(=学習)を進めるというストーリーを展開した。このようなSCCを受講した学習者の反応は様々であった。業務の文脈で実践的に学べることが良いという意見もあれば、職を持つ社会人学生にとって、自職とストーリーとの乖離が大きいと、SCCは苦痛でしかないといったものもあった。また、1年後学期には、実存する学部科目へのブレンド型eラーニング導入を計画する「eラーニング実践演習I」があり、これが課題となった。学んだ知識やスキルを活用する絶好の機会になるため、我々は、本科目を1年後学期の背骨として考えたが、フィクションであるMTM社の世界と“リアル”を相手にする本科目、そして、基礎力養成が中心の他科目と統合演習的な本科目という、これらの関係性を調整するのが難しいのだ。運用1年目は、MTM社以外に別な文脈を併走させて対応したが、一部の学生に混乱が生じた。2年目は演習科目自体をストーリーとして位置づけてMTM社の文脈をトーンダウンさせる一方、他科目との関連性を意識させる課題を導入したが、ストーリー的ではなかったという反応も見られた。

報告会では、フロアから、そして、ご講評をお願いした日本イーラーニングコンソシアムの小松秀圀会長や同志社大学の山田礼子先生からも貴重なご意見を頂戴した。特に指摘を受けたのが、ストーリーに馴染めない人への対応である。前述の通り、学習者からも意見があった点であり、今後検討を深めるべき課題と考えられる。また、特に小松会長からは、ソーシャルメディアやポータブルメディアをより効果的に使うこと、過去の学習者の学習成果や形成的評価の結果を取り込んで常に内容を変化させること、そして、実用化に向けたプラットフォーム開発を進めることなど、示唆に富むご提案を戴いた。

デザインの過程とは、ポリシーの実現に向けた試行錯誤を常に伴う。SCCは、上記の諸課題を抱えながらも、鈴木専攻長のご決断を受けてこの春から“統合型カリキュラム設計演習”という科目群に生まれ変わり継続される。この様なSCCの土台づくりに参画できたことを誇りに思うとともに、この挑戦的改革が更なる成果を挙げることを祈ってやまない。

(元 熊本大学院教授システム学専攻 特定事業研究員:小山田 誠)


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