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IDマガジン第38号 (2011/6/17発行)


[038-02] 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(34) ~ジョン・ケラー再来日:意欲が低すぎるのも困るが高すぎるのも困る~

ヒゲ講師は6月11・12日、昨年に引き続いて来日したARCSモデルの元祖ケラー教授のアテンド兼通訳者として二日間8コマに及ぶセミナーをご一緒した。日本医療教授システム学会(JSISH)の招きによる有料セミナーには、30人を超える熱心な医療教育関係者が集まった。やる気のある人を相手にセミナーをやるのは「やりがい」がある。スポンジのように何でも吸収してくれるから。英語から直接吸収できる人も多く混ざっていたが、そうではない人の元祖からの学びの障壁になってはなるまい。そう思うと通訳にも力が入った。

配布資料と当日用いるプレゼンテーション用スライドの両方を予めもらっておき、和訳をつけた。でも発達中の老人病症状の表れか、最終版より前のファイルを事務局に送ったらしく、当日用意されている配布資料を見て慌てた。「あれ、付けたはずの日本語訳が途中で切れてる!」

最新版をいちおう一部印刷して持ち歩いていたので事務局の素早い対応のおかげで何とか間に合ったが、えらくみっともなかったなぁ。皆さんも気をつけましょうね、ファイルのバージョン管理と保存する場所の管理。「ちゃんとダブルチェックせよ」とかいつも学生にうるさく言っている手前、かなりみっともないものです、自分がうまく立ち回れないと。

閑話休題。初日はインストラクショナルデザイン(ID)の上流工程で使えるたくさんのワークシートを今回のセミナーのために作ってきたくれたケラー御大。
やっぱり「上流」が大事ですね。少し期待からは外れたかもしれませんが、IDの神髄は無駄なものをつくらないこと。きれいな教材がつくれても、仕事に結びつかなければ意味ないよ。学習から行動、組織の成果(評価レベル2→3→4)とつなげるためには、組織の成果として何を目指すのか、それを行動変革でどう実現するのか、行動変革を支えるための学習をどう設計するのか(分析レベル4→3→2)。分析と評価計画がバランス良く準備されていてはじめてシステム的と言えるのね。そんなメッセージが込められていた。医学教育にはここが欠けている、と主催者。ヒゲも妙に納得。そう言えばうちの大学院でここんとこちゃんと教えているかな、と反省。

二日目は「おはこ」のARCSモデル。4要因もいいけど、それはARCSモデルの最初の半分。あとの半分の設計プロセスもありまっせ、という内容で、最後にはヒゲ講師が仙台時代に提案して訳本の第11章にも組み込まれた「簡略版」が取り上げられ、ヒゲ満足。えらく疲れた二日間でしたが、その後に新宿の少しさびしげな夜景を見ながら酌み交わした般若湯は美味でした。いい仲間に出会えてまた一歩進んだしあわせ。

ちなみに逆U字曲線でおなじみの学習者分析。無駄な動機づけ方略を使わないためにも便利な「簡略版」とともに表の形で説明されていました。学習意欲は低すぎるのは困るけど高すぎても学習の妨げになる、という表。訳本では第8章(224~226ページあたり)に言葉で書いてありますが、表にするとすっきりしますね。マガジン形式のこの日誌に表形式を表現するのは難しいですけど、:と<=>を境界線にしてフォーマットしてみてください。

ARCS要因:低すぎる<=>高すぎる
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注意の準備度:退屈・眠い・注意散漫<=>多動性・注意が焦点化できない
関連性の知覚度:無関心・私には無駄<=>恐れ・危機感・失敗した時の結末
自信の感じ方:力不足・無力感・制御不能<=>自信過剰・懐疑的・独善的
満足感の可能性:ひねくれた・負け惜しみ・出来たってそれが何になるっていうんだ<=>万能薬・過度な高い期待
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ケラーによるセミナー配布資料19ページ

セミナー参加者の学習意欲は高かった。だけど高すぎたわけではなかったようです。医療教育関係者が手を焼いている「何でも知っていると思っている傲慢な医者」とは、そこが違っていたということですな。

(ヒゲ講師記す)


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