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IDマガジン第38号 (2011/6/17発行)


[038-05] 【報告】IDコンサルタント活動報告?JICA‐ICTキャパシティビルディングプロジェクト@FIJI

3月中旬の約2週間、私と鈴木先生はFIJIで過ごした。
FIJIというときれいなビーチと青い空を想像される方が多いかもしれないが、私たちが滞在した首都スバはリゾート地と対極の南南東に位置する。高い湿度のためさわやかさはあまりないが、活気の中にもどこかのんびりした空気を感じさせる。震災当日が出発予定であったため、出発を翌日にずらし、私はとても複雑な気持ちで現地へ向かった。

目的地である南太平洋大学(USP)を訪れたのは2005年の秋以降初めてであり、二度目であった。2005年にJICAプロジェクトの専門家として鈴木先生が派遣された時、おまけとして同行したのが前回。多数の島国によって成る環太平洋地域に存在するこの大学は、地域の人にとって重要な学び場である。紙媒体を使った遠隔教育は、地域の人たちにとってかけがえのない学習手段だ。その情報源、つまりテキスト開発を中心としていたのがUSPにあるDFLCL(Distance and Flexible Learning Support Center)だった。英国の影響を強く受けたFIJIにあるUSPにはインストラクショナルデザイナーが5人ほど在席し、その下で活躍するスタッフが揃っていたことに衝撃を受けた。6年前は紙教材からCD-ROMなどを用いたデジタル教材、さらにeラーニングへと新しい技術を導入しつつ、開発部隊のキャパシティをどう高め、変化させていくのかを考える過渡期であった。そこでデザインスキルの向上と開発体制構築のアドバイザーとしてお呼びがかかったのが鈴木先生。南国に行けると喜んで参加したものの、滞在期間の2週間は熱く、勝負の時間だった。

今回は新たに始まったプロジェクトで呼ばれた。派遣先は前回と同じDFL(名前はCFDL-Center for Flexible and Distance Learningに変わっていたが)。私たちのミッションは与えられた2週間でファカルティーとスタッフデベロップメントのワークショップを行うことであった。ありがたいことに私も専門家として参加することになった。

前回USPを訪れた時はWebCTだったシステムが、今後の展開を見据えてオープンソースのMoodleに移行され、大学経営陣らはeラーニング(Moodle)を遠隔教育のみでなく全学に導入する目標を掲げていた。次世代の学びをデザインする支援組織へと変わろうとするUSP-DFLに派遣された私たちの役割は、前回にほぼ近いもの。

新たな技術を受け入れながら組織が成長するきっかけを与えることが期待された。
IDerって革新派じゃいけないのだなと、改めて感じた。新しいテクノロジーに関心を持つスタッフは私たちから新しい知識を得ようと必死であった。前回のように職種ごとにインタビューを行い、ニーズを整理しワークショップに備える。すると強気のスタッフからいろいろな声が聞こえてくる。組織体制への疑問、テクノロジー導入によるスタッフの役割変化に対する不安、ポジションや仕事内容への不満など、予想以上の課題が浮き上がってくる。日本でもありえそうな課題がたっぷり。また、通学制と通信制の学習環境には以前と変わらない差が明らかになった。学内には安定したネットワークが敷設されるようになり、USPに通学する学生は比較的恵まれた環境が整備されているが、遠隔で学ぶ学習者はこれまでと変わらず距離と戦っていた。島国で一人で学ぶ人も多い。

多くのステークホルダーの役割を理解しつつも、エンドユーザである学習者たちにとって、最大限の環境を提供することを常に意識する必要がある。言葉で言うより難しい。与えられた使命にやりがいを感じながら、深く学んだ2週間だった。

我々のメッセージは、ワークショップの中に埋め込んだ。その成果は近いうちまとめ発表する予定である。お楽しみに(え、いいところで終わっちゃう?そうなんですよ、すみません)。

熊本大学 根本 淳子


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