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IDマガジン第39号 (2011/9/12発行)


[039-04]【報告】Second World Congress on Positive Psychologyに参加して

2011年7月23日から26日までの4日間、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアで開催された国際ポジティブ心理学会第2回世界大会に参加してきたので、報告します。猛暑であった東京よりもさらに高温多湿となっていたフィラデルフィアに、63カ国から約12、000人が集まりました。

最初の基調講演は、学習性無力感の研究でも有名であり、ポジティブ心理学の生みの親の一人と言われる、マーティン・セリグマンです。GAT(Global Assessment Tool)を開発して、米国陸軍130万人を対象にした大規模なプロジェクトを行っているとのことで、感情的・社会的・精神的・家族的、の4つの強みについて個人個人を分析し、兵士の精神的健康維持プログラムとして実施しています。このような取組は大学やK-12(幼稚園から高校)等でも取り入れようという動きが出始めているとのことでした。

次に、SDT(Self Determination Theory: 自己決定理論)を提唱しているエドワード・デシです。歴史的な背景も踏まえてSDT研究の系譜の説明があり、アンダーマイニング効果についても紹介がありました。特にAutonomy(自律性、自主性)について強調していました。

フロー理論を提唱しているマイク・チクセントミハイのセッションは一風変わったものでした。彼の息子であり、カリフォルニア大学バークレー校東アジア言語文化研究科の教授である、マーク・チクセントミハイと二人でソファーに座って始まり、あたかも、自宅のリビングにおいて2人で夕食後に談話している雰囲気でした。対話のテーマは、東洋の宗教である道教、儒教、仏教の教えに書かれている、Happiness(幸福)やEnjoyment(楽しみ)に関する記述についてマークが解説し、マイクがコメントするというものでした。

ポジティブ感情の研究や3:1の法則等で知られる、バーバラ・フレドリクソンはLove(愛)という感情についての最近の研究成果について発表しました。ここでは、愛という感情は広い意味でPositivity Resonance (肯定感の共鳴)ととらえられていました。

よく目/耳にしたキーワードは以下の通りです。Resilience(回復力)、Meditation(瞑想)、Strength(強み)。特に瞑想のワークショップは大盛況で立ち見や通路もいっぱいでした。瞑想の方法や瞑想とポジティブ感情との相関に関する研究成果の発表があり、最後の15分ぐらいは参加者全員で瞑想を試してみるというものでした。また、招待講演の1つに、ラマ教の僧侶の瞑想状態をfMRI(機能的核磁気共鳴)を利用して脳の活動状態を分析する研究発表もあり、瞑想の科学的な分析には非常に関心が高かったです。

ポスターセッションでは、心理学分野だけでなく、他の分野への応用研究も多くありました。経営、教育、医療、健康など、様々な分野へのポジティブ心理学の応用が発表されていました。教育分野では、大学の授業にポジティブ心理学を取り入れ、様々な活動を組み合わせてカリキュラムを構築しているミシガン大学の取組例や、先生の幸福感の研究、教職課程の学生を対象とした幸福感改善プログラムの提供、青少年の幸福感の醸成、など様々な発表がありました。
心理学系の学会に参加するのは初めての経験でしたが、いろいろと刺激を受けました。私の研究テーマと関連の深いフロー理論に関する発表も多くあり、有意義な意見交換ができました。実証的な研究からスタートしたポジティブ心理学の分野だけあり、私の研究テーマへは、「アイディアはわかったが、結果は?」という質問が多くあり、早く実証実験を進めなくてはと強く思った次第です。

Second World Congress on Positive Psychology:
http://community.ippanetwork.org/worldcongress/

(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士後期課程 加藤泰久)


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