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IDマガジン第4号 (2004/8/14発行)


[004-05]e-Learning World 2004

7月28日~30日の3日間、東京ビッグサイトにおいてe-Learning World 2004 が開催されました。
我らが師匠、鈴木ヒゲ講師もなんと2セッション独占という画期的な形でご講演されました。
7月28日水曜日の午後のセッションB-2、B-3です。 実は、私はイーラーニングコンソシアムのスタッフとして参加していました。
ぜひとも、鈴木先生のお手伝いをさせて欲しいと頼み込んで当日のセッションの担当にしてもらったわけです。
当日は人気者の鈴木先生のセッション、大入りでした。さすが! 内容についても3日間の中でも特によかったと思います。

ところで、私はe-Learning World 2004に3日間とも参加したのですが、全体の印象 は「本質に迫ってきたなぁ」というもの。
従来は、どちらかというとeラーニング導入事例を中心にeラーニングの良さをア ピールするセッションが多かったように思います。
eラーニング普及の秘訣は、やはりうまく活用すること。そのためには、うまく教材を作成し、運用していく事が重要だと思います。
そうです。要は、きちんとIDでもって研修の設計をした上で教材を作成、運用することがeラーニングのカギであるという事がわかってきたということなのでしょう。
また、会場に展示しているブース数も減少しているのが印象的でした。
ブームに乗って雨後の筍のごとく登場した様々な企業も淘汰され、しっかりしたコンセプトをもっている企業が生き残ったという感じでしょうか。
前置きが長くなりましたが、そんな中で鈴木先生の講演はインパクト満点です。 いきなり、ベンダー批判をするなど、今まででは考えられなかった事です。 では、内容をおさらいしつつ所感を述べていきたいと思います。

【詳説インストラクショナルデザインⅠ:評価とROI】
私は、eラーニングの担当をやっていますが、集合研修の企画、設計、実施もしています。
ですから、研修効果測定については少なからず勉強をしました。カーク・パトリックの4レベルやジャック・J・フィリップスの5レベルなどについてもある程度理解しています。
鈴木先生が、ROIについてどのように考えているのか・・・興味津々です。
結論からいうと、「ID者はROIの測定をやるより大事な事があるよね」ということでした。
同感です。
そもそも、研修効果測定に莫大な時間を費やし、しかもその測定が果たして合っているのかどうかもわからない。 そのようなことに労力をかけるよりも、受講者のために何が出来るのかを考えることのほうがよっぽど大切であるということです。
また、ROIの測定では無理やり教育の効果を分解しますが、それもナンセンスだと思います。
集合研修の場合、日常から離れ違う空気の元、会ったこともないような人たちと交わる事自体にも価値があると思うのです。
メンタル的な面、人脈構築の面からも見えない効果があるものです。 研修の効果測定については、受講者にとってもメリットのある形で実施する事が大切だと思います。
研修フォローという形でeラーニングを使っていけば、レベル3の行動変容まで追跡でき、しかも受講者のスキルアップにもつながる。このような形で実施するのが望ましいと痛感しました。
研修効果測定に時間を費やし、自己満足している暇はないですよね。

【詳説インストラクショナルデザインⅡ:トレーニングを減らす設計法】
このセッション、衝撃的なサブタイトルで幕を開けます。
「ベンダーさんにあえて申し上げる:無駄な製品を売るのはプロじゃないよ」
このサブタイトルを見て、鈴木先生は無事に帰ることが出来るだろうかと心配しました。だって、会場にはベンダーさんが半数程度いるんですから・・・
何かあれば身を呈して助け出さねばと妙な緊張感が走っていました。

冗談はさておき、このセッションの結論は、トレーニングの3つの無駄を省く事が大事であるというものでした。IDの本領発揮ですね。トレーニングの3つの無駄とは、「コンテンツ内部の無駄」「システム全体の無駄」「ユーザー要求の無駄」です。
そもそも、IDに則って教材開発をしていけばこのような無駄が発生するはずはないのですが、ちまたのコンテンツは無駄の塊のようなものも見受けられます。 そこには、ベンダーのジレンマがあるのでしょう。 効果音やBGM、動画や写真、アニメーションがなぜ必要で、どのような効果が期待できるのかが理論的に説明できなければそれは無駄となります。
IDの要である分析段階でその部分を明らかにしなければ、出来上がったものは無駄の塊になってしまうという事でしょう。
だいたい、その教材自体が本当に必要なのか・・・それすら検討できないようでは無駄のタレ流しになるのではないでしょうか?結局、キチンとIDに則った教材づくりがベンダーの未来を明るくするのだと思います。
今こそ、教材屋から職能向上コンサルタントに進化する時なのです。 さあ、コンサル力を身につけてeラーニングの未来を作っていきましょう!

最後に、鈴木先生の話を聞いての総合所感です。
今まで、なんか良さそうだから教材化しとこうか、そしたら、アニメとか動画とかいれればインパクトも出るしうけるよねぇ・・・って感じで教材を作っているようなものも見受けられました。本当に必要なの?どう使うの?って、あまり考えてなかったかもしれないですね。
また、最近になって、ブレンディングがもてはやされていますが、これもきちんとした信念をもってやらないと、ただの押し付けになります。
研修は、受講者本人の能力向上だけではなく、受講者の周辺にも影響を及ぼし、シナジー効果によって組織力が向上していくように設計しないとダメだと思います。
そうすれば、おのずと研修の効果も評価されると思いますし、ROIの算出などという面倒な手続きも必要なくなると思います。
将来、研修など実施しなくてもみんなが元気に明るく仕事をし、自分と周囲の者たちとの良い影響により能力が向上し、新たな知識も積極的、自主的に収集する。
そんな環境を作り出せるようなID者になりたいと思います。

(四国電力 小笠原 記)

eラーニングワールド2004講演資料:
「詳説インストラクショナルデザインI:評価とROI」(B-2)
http://www.anna.iwate-pu.ac.jp/~ksuzuki/resume/addresses/a40728a.pdf

「詳説インストラクショナルデザインII:トレーニングを減らす設計法」(B-3)
http://www.anna.iwate-pu.ac.jp/~ksuzuki/resume/addresses/a40728b.pdf


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