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IDマガジン第45号 (2013/2/22発行)


[045-04] 【報告】EDUCAUSE 2012 in Denverに参加して

今を去る事3ヶ月前、私は、成田空港第1ターミナルでロサンゼルスへの出発便を待っていました。人生初のEDUCAUSE年次大会に参加することになり、10数年ぶりの米国渡航に胸を躍らせていました。大学でずっとICTやeラーニングの仕事をしていると、どこからともなく聞かれる「EDUCAUSE」という言葉。最初はそれが何なのかすらわかりませんでした。どうやら、米国にはIT(情報技術)の活用によって、高等教育を進歩させることを使命とするNPOがあり、1,800の高等教育機関、300のIT関連企業が加盟し、毎年8,000人もの人が参加しているというのです。そんな場所に自分も立ってみたい!そう思い続けて数年、やっと願いが叶いました。

11月5日夕刻。標高が1,600mあることから、「ワン・マイル・シティ」と言われるコロラド州デンバーに降り立ちました。11月6日にはeポートフォリオのプレカンファレンスセミナー、11月7日には基調講演、ポスターセッション及び分科会、11月8日には分科会に参加しました。さすがに全米、いや、世界規模の参加者が集まる一大イベント。会場は多くの人で混雑していました。
そして、分科会では、アメリカらしく、講師への活発な質問が出され、それぞれの職場で、さまざまな立場で、「ICT」「高等教育」というキーワードのもと、議論が交わされました。特にアメリカでは、大学の中退率が高く、なんとか中退を未然に防ぎ、リテンションレート(学業継続率)を上げるための方策として、学生の学習履歴管理、日本でも最近話題となっているInstitutional Research(IR)に繋がるデータ管理システムなどの提案が多く見られました。日本で今流行(?)のeポートフォリオシステム、ルーブリック、タブレットやモバイル端末などに関する分科会はかなり少なく、米国と日本のICTと高等教育にまつわるトピックは違うのだなあと感じました。どのようなシステムを使うのか、ということよりも、それらを使って何をどうするのか、といった利用の仕方、利用の結果として生成されるモノをどう使うのか、という方向を強く感じました。

基調講演は「IT as a Core Academic Competence」というテーマで、ニューヨーク大学のShirky教授から米国の大学生が置かれている状況についてのプレゼンがありりました。FacebookやTwitter、その他、スマートフォンのAppsなど、「教育用」と名前のついていないソフトウェアやシステムが、どんどん教育の分野に入り込んでいる現状があり、大学人たちは、そのようなトレンドに遅れることなく、その状況を理解し、行動するべきだという趣旨のお話がありました。
また、“Active Learning and Engagement Initiative (ALEI): Engaging Faculty to Transform Pedagogy through Assessment”という分科会では、米国Emory大学のEducational Analyst、Center for Interactive Teachingによるプレゼンテーションが行われました。FDの実践事例として、Blackboardや動画撮影(教員が自分自身で出演し、自分史を語る)を取り入れた、いわゆるアクティブ・ラーニングによる研修会の紹介がありました。
ビデオで自分史を語る、もしくは、自分の意見などを主張する方法は、デジタルストーリーテリングと呼ばれ、教育工学分野でも研究の一分野として日本でも徐々に取り入れられつつあります。教員があらかじめFDでBlackboardやデジタルストーリーテリングを経験して、そのよさに気づき、効果的な使いかたを理解することで、今度は教員が自分のクラスの学生に応用することができるというものでした。
米国においても、FDの活性化は簡単な道のりではなく、様々に試行錯誤をしているのだな、という現状を垣間みることができました。

EDUCAUSEでは、教授システム学専攻の先生と、私と前期課程の同期2人(IT関連企業に勤務)も参加しており、インストラクショナル・デザインで得た知見をICTと高等教育をどのように結びつけて行けるのかといった話をすることができました。専攻でEDUCAUSEツアーを企画するのもよいかもしれません。

なお、EDUCAUSE参加報告として、2013年2月13日(水)に第152回熊本大学eラーニング推進機構ランチョンセミナーにおいてプレゼンテーションをいたしました。もしご興味のある方がおられましたら、録画をご覧頂ければ幸いです。
http://cvs.ield.kumamoto-u.ac.jp/wpk/

2013年度EDUCAUSE開催地であるカリフォルニア州アナハイムにて。
[熊本大学 教授システム学専攻(修士5期修了生)・博士後期課程1年 野田啓子]


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