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IDマガジン第51号 (2014/2/9発行)


[051-03] 【ブックレビュー】教育目標をデザインする―授業設計のための新しい分類体系― R. J. マルザーノ・J.S ケンドール 著 黒上晴夫・泰山裕 訳

本書はブルームのタキソノミーの改訂版として出版された書籍「The New Taxonomy of Educational
Objectives」の翻訳版である。ブルームの学習目標の分類体系と聞けば、教育関係者にとってはあまりにも有名なもの。本書は、2001年に第一筆者によって出版された著書の継続版にあたり、ブルームの分類体系を進化させ、新しい分類を提案したものである。

本書は6章構成で、ブルームのタキソノミーのおさらいから始まり、マルザーノとケンドールの改訂版タキソノミー(新分類体系)がブルーム版の弱点をどのように強化して提案したものであるのかを、その他の分類体系との比較を通じて解説されている(1章)。2章以降では、新体系の各要素について説明されており(2-4章)、これらを教育目標に活用していくための解説の5章、カリキュラムレベルでの検討に触れた6章と続いている。ページ数は180ページ弱であるが、予想通り中身はたっぷりという感じである。

そもそもブルームのタキソノミーが何だっけ?と思われた方は、教授システム学専攻の公開講座のコンテンツで簡単におさらいしておくとよいでしょう。ブルーム版は、教育目標を認知的領域、情意領域、精神運動的領域の3領域ごとにレベル分けしたものである。一般的に知られるのは6つの認知プロセス(知識・理解・応用・分析・統合・評価)に分かれた認知的領域である。

提案された新分類の特徴をブルーム版との比較からまとめると、ブルーム版の認知的領域で指摘されていた上記6つのプロセスの階層構造の見直し、メタ認知の追加、そして知的・情意・精神運動の3領域を統合させたことである。

その新分類体系とは、6つのカテゴリーで構成される「処理」に関する次元と、3つの領域を持つ「知識」に関する次元から構成される二次元モデルである。「処理」のレベルはレベル1:取り出し(認知システム)、レベル2:理解(認知システム)、レベル3:分析(認知システム)、レベル4:知識の活用(認知システム)、レベル5:メタ認知システム、レベル6:自律システムの6階層構造である。「知識」の領域は情報、心的手続き、精神運動手続きである。処理にあるレベル1から4がブルームの認知的領域に相当し、その上のレベル5に置かれたメタ認知は新分類体系で新規追加されたもの、そして自律システムがブルームの情意領域に相当する。一方の知識に関しては、まずブルームでは認知的領域の中に知識と知的操作が混在していたものを、本分類体系では、知識だけを取り出し3つの種類に分けた。心的手続きとは手続き的知識に相当するものらしい。そして精神運動手続きはブルーム版の3番目の領域に相当するものですべての処理に含まれるように変化した。6つに分割された処理は、宣言的知識(何を)に相当する情報と、手続き的知識(どのように)に相当する心的手続き、そして身体を動かす精神運動手続きの3種類の知識ごとに行われる。よって、どんな知識に対するどの処理を学ばせたいかをこの二次元モデルで確認・整理していくことができるという。本書にはこの二次元の図が書かれているので是非直接手にとってご覧いただければと思う(13ページまたは63ページ)。書籍に書かれている図だと、処理と知識の6×3の関係が分かりにくく、もうちょっと分かりやすい表現の仕方があるのではないか、と思うが、そう思うのは新分類体系の理解が不十分なためかもしれない。

本書はマルザーノとケンドールによる提案であるが、筆者らが初めて新分類体系を提案した2001年には、ブルームの教え子であったアンダーソンらによっても分類体系がまとめられている。ブルーム版の抱える課題に対して解決しようという目的は両者とも同じであるので、共通点がいくつか存在する。例えば、メタ認知に関する視点を追加したところは同じであるし、ブルーム版の中にある知識には知識そのものと認知過程の両方が含まれていたことを分類させようとしている点などもそうである。しかし、認知・情意・精神運動の3領域を組み込んだ点や、メタ認知の位置づけ、そして学習者が新しい課題に取り組むかどうか、取り組むならどれぐらいの意欲を持つかといった自律システムもコントロールすると考えメタ認知システムの上位に自律システムを位置づけた点は彼らの新分類体系の特徴であろう。

新分類体系の魅力は大きい。しかし「授業実践に落とし込みやすいのはガニェの学習成果の5分類」と言われていた指摘はまだ解決されていない様な気がするが、気のせいだろうか。個人的に5分類の利用年数が長いだけだからかもしれませんね。新分類体系の利用者が増え、また本体系を使いやすくするための方法などが研究者や実践者によって多く増えてくることを期待したい。

参考文献
教授システム学専攻の公開講座 基盤的教育論 ブルームのタキソノミー
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/opencourses/pf/2Block/04/04-1_text.html

(熊本大学大学院 教授システム学専攻助教 根本 淳子)


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