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IDマガジン第61号 (2016/4/30発行)


[061-03]【報告】熊本大学教授システム学(以下GSIS)設立10周年記念同窓会特別イベント『インストラクショナルデザイン』修了後にどう生かす?

015年度の入科式から行ってきたGSIS設立10周年記念同窓会イベントも今回で最後となりました。その締めくくり企画を2016年4月9日(土)新年度の入科式に合わせて開催しました。テーマは「GSIS修了後にインストラクショナルデザイン(以下ID)をどの様に生かすのか」です。今回お迎えしたゲストはIDを修められたのちに大活躍されています、前回のKU対決から2回目の参加となりました京都大学高等教育研究開発推進センター・センター長兼教授の飯吉透先生と、今回が初参加となりました東京大学大学総合教育センター助教の藤本徹先生という通称Wトオルのお二方です。そこに我らが鈴木克明先生を交えましてパネルディスカッション形式で開催しましたのでご報告いたします。

<第一部>
はじめに、それぞれのご専門の立場から、お二人がIDを現在の実践・研究にどのように活かされているのか、またそこに至るプロセスなどを語っていただきました。

○東京大学 大学総合教育センター助教 藤本徹先生
米国ペンシルバニア州立大学大学院で教授システム学博士号取得。留学中シリアスゲームと出会う。ゲームコミュニティではシリアスゲーム開発にインストラクショナルデザイナー(以下IDer)が関わるとゲームがつまらなくなると揶揄されたこともある。現在の仕事は東大MOOCを担当し、研究領域はゲーム学習。MOOCのコース開発の知識としてIDが必要であり、ゲーム学習では楽しさと学習の要素を組み合わせるデザインの核となっているのがIDである。IDerの活躍の場は豊富にあるはずと考える。現在日本でMOOCが広まらないのはIDerが不足しているのではないか。学習環境のデザインにはIDの知識は必ず必要なので、留学せず日本で学べる環境(熊大GSIS)があるのはよかったですね。

○京都大学高等教育研修開発推進センター・センター長/教授 飯吉透先生
国際基督教大学にて教育修士号を取得したのち、米国フロリダ州立大学教育大学院にて教授システム学博士号を取得。ジョージア大学研究員、カーネギー財団研究員、MITのシニアストラテジストなど歴任され現在に至っている。自分が面白いと思える仕事だけを選び、さらに実績を残してきた。IDを基盤しながらも、自分の経験、勘、度胸を武器にハイリスクハイリターンな道を選んできた事を自負している。仕事してはFD中心であるが、京都大学の教育制度改革を行った時に、マクロな視点で教育制度や学位プログラムを捉えるためにIDやISDの知識の必要性を再確認した。また研究のメインテーマはオープンエデュケーションであり、それを行うために日本へ戻ってきたので日本から発信したいと考えている。例えば大学院でのゼミでは「宇宙大学を作ろう!」というPBLを行っている。また最近では大学教員のためのオンラインFD支援システムのコミュニティサイト(MOST)を運営し相互研修の場を提供している。工業化の波で発達したIDが反ID的なもの(個別性や好みや予見的に感情的な事)にどのように対応できるかが、これからのIDの課題だろう。

<第二部>
第一部のお二人のお話しを受けて、会場から出た質問・疑問などを中心に、鈴木克明先生を司会に迎えて進めていただきました。(以下は今回行われたディスカッションの中の一部です)
○藤本先生への質問
「ゲーム学習について。もともと意欲が高い人への対応はどのようにすれば良いのか?」
回答:ゲーム学習することの長所は、やりたくなるようなゴールとルールを設計する事。意欲の有無は関係なく共通するところ。学習者分析を行い、内容を切り分けて考える。ゲームを入れれば何でも良くなるわけではない。IDを入れれば皆が面白く夢中になる学習が出来るわけではないのと同じ。
「ゲーム開発にIDerが入るとつまらなくなるのは何故?」
IDerは学習の専門家であり、面白く作る専門ではないのだから、ゲーム作りの専門家と協力してより良いものを作るべき。学習する上での理屈と面白くする事がぶつかることはある。しかし杓子定規で物を捉えるのはビギナーで実力派とは言えない。教科書レベルの事しかできない人はつまらないものしか作れない。教科書レベルのことで出来ることは実際は少ない。
○飯吉先生への質問
「IDerのディマンドプルできるのか」
IDer、FDerと言うことだけでは売りにならない時代である。例えばIDerの中でもゲームベースの専門家になるとか付加的なものがなくてはいけない。その点でオープンエデュケーションの一番のメリットは多様性である。好みに合った学びも提供できる。IDは工業化的な文脈から生まれたが、今後は家内制手工業的な文脈を重要視しなくてはならない。決まったことを決まったように学ぶのでは世の中に求められない。金太郎あめのようなIDerは要らない。
○鈴木先生のコメント
例えばディック&ケアリーのモデルなどは大学院で必ず学ぶが、実践で使っている人は誰もいない。実践者は臨機応変に対応している。モデル通りにかっちり行えば良いコンテンツが出来るのでは決してない。しかしプロセスを経ないとどのようにアプローチして良いか分からないはずであるので大切であることに変わりない。

○締めの言葉:教授システム学の研究者や教育実践者へ送るメッセージ
・藤本先生「この分野を学ぶ人を増やさないといけない。仲間を増やしてほしい。仕事をしながら日々の授業の課題をこなす人も多いと思う。授業の課題は今の知識で出来る事を期限内に提出して、とりあえず希望のところまで到達してほしい。たどり着かないと面白さも実感できないと思う。」
・飯吉先生「体を大事にしてください(無茶してください、無理してください、自分を越えてください)このあたりだろうなと落としどころを決めて取り掛かると元気が出ない。IDerであろうとなかろうと情熱を持ってやるような人間がこれから求められる。」
・鈴木先生「お二人の話から、こなす仕事と、命を懸ける仕事の見分けをしながら両立していきましょう」

本イベントは大変多くの方々にご参加いただき、GSIS設立10周年記念の締めくくりにふさわしい内容となり盛況のうちに無事に終幕いたしました。これもひとえに鈴木克明専攻長の人望と教授システム学が持つ魅力の現れだと思います。ご参加頂いた皆様に熱く御礼申し上げます。

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士6期修了生 岡﨑大輔)


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