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IDマガジン第70号 (2017/11/18発行)


[070-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(66) ~システム思考をしないことはできない。それに気づくかどうかで差が出る~

ヒゲ講師は、米国フロリダ州ジャクソンビルにいた。日本教育工学会の提携先AECTの全国大会に出るためであった。時差ぼけに悩まされながら聞いたカブレラ教授の基調講演「教育におけるシステム思考:新しい考え方」はとても印象的だった。以下、聴講メモをもとに再構築して共有したい。

「すべてのモデルは間違っている。しかし、その中のいくつかは有用である(誰かの言葉の引用)」。モデルは現実の一部を切り捨てたものだから、当然現実と同じではない。その意味では「間違っている」が、その切り捨て方によっては、役に立つ。
--まあそうですよね。モデル化というのは切り捨てることで特徴を浮かび上がらせることですから、下手にモデル化すれば間違っているだけでなく役にも立たない。この聴講メモも読者に役立つように「モデル化」(というか抜粋ですかね)していると良いのですが・・・。

モデルは知識であり、それは情報と同じではない。知識は情報に思考を付加したものであるが、両者を同一視することが横行している。その果てにあるのはクイズ番組の正解が言えるようになることだけであり、思考ができるようにはならない。昔のレゴは何を作るのかの自由度が高かったが、最近はレゴキットになり完成品に必要な部品だけが提供されるようになった。これでは思考力は育たない。
--確かにそうですな。M=i+TがM=iだけになっていてT(Thinking)が抜けている。式で表現されるとなるほど、と思ってしまうものですね。

学習のメタファーとして使うべきものは「散らかった建設現場(messy construction site)」である。情報処理に使うコンピュータや、何でも注入できるスポンジ、あるいは授業で入金してテストで引き出すATMのメタファーでは考えるという要素が入らない。
--建設と構築が同じConstructionという言葉なので英語の方がイメージしやすいですかね。注入・転移モデルではなく、学習者が自分で知識を構築しているという前提にたつということ(ちなみにこれと対比して使われるのがInstructionという言葉ですが、IDをやる人は「学習を支援すること」という意味でInstructionを使います。つまり両方含むと考えますが、情報処理モデルに基づく9教授事象はやっぱり注入的ですかね・・・、少なくともそのように誤用される危険はありそう)。

学習者のイメージも常に「工事中(Under construction)」であり、知識を構築する人になる。教師からの指示を待っている人、情報の消費者というイメージが払しょくされる。
--構築しているように見えてもレゴキット(=同じ結果が出るもの)じゃダメだということ。ポートフォリオはパンドラの箱、正解主義が問われることになる、というヒゲの主張に通底していますね。

「考える」とはどういうことか。そう真正面から問われると答えに困る。でも実際は、DSRPの4つをやることが考えるということだ。Distinguishは区別すること(AかnotAか、内か外か)、Systemはシステム(部分と全体として構成要素を分解・統合すること)、Relateは関係性(要素間にどんな関係があるか)、Perspectiveは視点(見方によって見え方が変わるのでバイアスが入り込む)。DSPRを行ったり来たりしていることが「考える」ということの実態だ。
--これがカブレラ教授のモデル(詳細は参考文献にあります)。

「考えない」ということを選択することは不可能である。人はいつも(always)、すでに(already)考えている。現実をそのまま受け取っているのではなく、バイアスをかけて見ている。ただそのことを自覚するかどうかで差が出てくる。
--正解主義で覚える教育ではダメだ、ということはよく言われますが、じゃぁどうすればよいのかを考えるときにはヒントになるかもしれませんね(あ、ここにも「考えるときには」が登場しました。考えないことはできない、ということですね)。

小さな子どもにいろいろ聞かれて、Google検索しながら答えた父親。子どもに「パパって頭いいね」と言われた。それって頭がいい(Smart)ということなのか、真剣に考える必要があるのではないか。

(ヒゲ講師記す)

参考文献
Cabrera, D., & Cabrera, L. (2015). Systems thinking made simple: New hope for solving
wicked problems. Ithaca, NY: Odyssean Press.


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