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IDマガジン第70号 (2017/11/18発行)


[070-03]【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ:第10章「スキルの発達を促進する」 (アレクサンダー・ロミゾウスキー)

スキルとは効果や効率、速さ、その他の量や質の指標を伴う、特定のタスクや活動を遂行する能力のことで、このスキルをどう延ばすのか、スキル習得の基本的な原理や手法について述べられているのがこの第10章です。この章を読んでスキル開発の学習環境を改善しましょう。

スキルにはいろいろな分類があり、一般的には、実行部位によって、認知スキル、運動スキル、反応スキル、対話スキル、などと分けられます。本章では、このような分類ではなく、対象とするタスクの複雑さや高度化の観点から、再生的スキル、生産的スキル、に分けてスキル開発手法を述べています。再生的スキルとは反復的で自動的に実践でき、標準的な活動が組み合わさったタスクを達成するためのスキル、生産的スキルとは、理論や一般原理、あるいは創造性を随時適用しながら、状況に応じて適切な行動を計画することを必要とするタスクを達成するためのスキルです。

熟達したスキルを必要とする行動・活動は、以下の4つのサイクルを繰り返しながら、行動を実施しています。

(1)知覚(環境からのインプット)

(2)前提条件の想起(知覚した内容の正しい解釈)

(3)計画(実行するのに適切な行為の決定)

(4)実行(環境へのアウトプット)

これらは(1)から(4)に必ず順番に処理されるのではなく、対象とするスキルによってサイクルが異なります。簡単な再生的スキル、例えば、タイピング等は、(1)で知覚をしたら、(4)の実行に直結しています。また、ゴルフ初心者がスイングするときは、生産的スキルなので、確実に、(1)−(2)ー(3)ー(4)というサイクルで行動が実践されます。つまり、どのようなスキルを習得しようとしているのかによって、どこをどう鍛錬すればよいのかの場所が変わってきます。

また、一般的なスキル習得の教授方略についても述べられており、

ステップ1:必要な知識の内容を教える

ステップ2:基本的な精神運動スキルを教える

ステップ3:熟達化(速さ、スタミナ、正確性)と般化(状況や事例への転移可能性)

としており、ステップ2については、さらに細かく3つの方法を紹介しています。

全体のタスクがA,B,Cの3つの順番で構成されているとして、以下の3つの方法が考えられます。

1.全体タスク法:A-B-Cをひたすら繰り返す

2.漸進的部分法:Aの習得が終われば、A-Bを繰り返し、A-Bの習得が終われば、
A-B-Cを練習する

3.逐次的部分法:A,B,Cとバラバラに習得し、最後に、A-B-Cを習得する

最後に感想ですが、スキル習得の学習環境を提供する際には、闇雲に学習者に学習させて、失敗から学ばせる、という無手勝流的学習環境に任せるのではなく、まず、設計時に、一段上の視点から、習得させようとしているタスクを詳細に分析するところから始めましょう。その上で、そのタスクと学習者の状況に応じた習得方法を提供することで、学習者は効率よくスキルを習得できるようになります。

ただし、あまりお膳だてしすぎても自律的に学べない学習者を作ってしまうので、このあたりが、インストラクショナルデザイナーの腕の見せ所です。初心者には大きな足場を作り、中級者で、足場を小さくしていき、上級者は、自分でタスクを分析してスキル習得の学習方略を見出せるような学習環境(つまり、教授者はあえて何もしない)が提供できれば、インストラクショナルデザイナーのこのうえない喜びかと思います。

(熊本大学大学院 教授システム学専攻 博士後期課程修了生 加藤泰久)


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