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IDマガジン第9号 (2005/1/12発行)


[009-04]eラーニングフォーラム講師をつとめて

eラーニングフォーラムで、ヒゲ講師こと鈴木先生と研究員の根本さんとともに講師を務めさせて頂きました。

このチーム(といっても3人ですが・・・)での私の役どころは、
・自分が会社でeラーニングのマネジメントをしている経験を反映させることで、ケースをよりリアルなものにする。
・IDer(自称)として、研修のデザインをサポートする(特に進行・演出面)。
・当日、ファシリテーターとして受講者の皆さんの学習支援をする。
の3つです。

(1)悩みまくった準備

準備段階で最も悩んだことは、約一日という教える側としてはとても短く、学ぶ側としては決して短くない時間をどのように活用していくのかということでした。

「発注者のためのeラーニング要求仕様の作り方と導入マネジメント」という、丹念にやろうとすれば5日間であっても簡単に費やすことができる広く・深い題材を一日に納めるための学習項目の取捨選択、そして効率よく効果的に楽しく学習していただくための演出や構成は本当に悩ましいものでした。

eラーニングに限らず、「マネジメント」の学習を研修で行なうのは難しいものです。
マネジメントに必要な知識は研修で学ぶことが出来ても、その知識を実際に使うための状況対応力が無ければマネジメントは出来ません。そして対応しなくてはならない状況自体も多種多様です。

それがeラーニングのマネジメントとなると、さらに難しくなります。というのも、現場でマネジメントしている人たち(私もその一人ですが)も手探り状況で、まだそれほど多くの事例分析がされているわけではありませんし、定式化されたものがあるわけでもありません。

私たちのチーム内でもeラーニングのマネジメント・サイクルはどのように回っているのか?、ADDIEモデルとの関係は?、必要な知識やスキルは何か?・・・・といった議論を重ねていきました。

検討した(というか悩んだ)結果、eラーニング導入マネジメントの流れを俯瞰してもらうことを重視し、RFP(Request For Proposal:提案依頼書)の説明をした後で、マネジメントの流れの中のいくつかのキーイベントを選び、取り上げることにしました。
最終的に取り上げたキーイベントは
・ブレンディング形態の選択
・ベンダーの選択
・プロトタイプでの検証
・運用(+評価の準備)
・評価
の5つです。

この5つのイベントに際して、マネジメント上考えるべきことをグループでディスカッションしてもらうことにしました。与えられた問いに対して、グループディスカッションを通じて多種多様なアプローチ、考え方、情報に触れることがマネジメント力の向上に繋がると考えたからです。

さらにグループディスカッションは、まず上司(香川課長)と部下(啓太君)の2つの立場に分かれてディスカッションし、次に上司と部下の間でディスカッション(あるいはディベイト)をしてもらうことにしました。
このため、一つの課題ついて上司用・部下用それぞれの思惑を書いたワークシートを作成しました。

これは、2つの立場(視座)から問いを考えることでより多様な意見が出てくることを期待したことと、同じeラーニングに関わるチームの中でも人によって立場や思惑が違うという世界観を持つことが実際のマネジメントに役立つと考えたからです。

そして、多少ゲーム的な演出も盛り込み、楽しみながら学習していただけるようなしつらえも試みました。

(2)動きまくった当日

当日は根本さんがメイン講師として内容や進め方の説明をし、私がファシリテーターとしてグループディスカッションの進行とサポートをし、鈴木先生がコメンテーターとして解説をする、という役割分担で進めました。

最初のセッションの前半は鈴木先生と根本さんがRFPについて解説しました。RFPに関しては書いたことが無い、あるいは見たことも無いという人たちも多かったようで、様々なご質問を頂きました。

その後、ケース全体の説明をしてからグループディスカッションを中心としたセッションを合計5回繰り広げました。

この間の私のファシリテータとしての役割は、
・グループディスカッションの課題の補足説明
・グループの進行状況にあわせたサポート(ディスカッションが活性化しないグループに問いかけをする等)
・発表してもらうグループを選ぶ(1シーンあたり2グループ程度)
・面白い議論をしているグループを捜し、コメントを引き出す
・発表、意見交換、質疑応答のリード
といったところです。

受講者56人(1グループあたり約7人)、グループ数8と大規模なクラスになったため、セッション中、グループとグループの間を飛び回りながらのファシリテーションになり、かなり慌ただしいものになりましたが、殆どのグループでディスカッションが盛り上がり、ディスカション後の発表、意見交換、質疑応答からも、当初の意図通り多種多様な意見や情報がが受講者の皆さんの間で交換されたことが伺えました。

また、グループディスカッションを単に「楽しかった」だけで終わらさず、きちんとした「学び」を得てもらうためにはディスカッションの省察が重要なのですが、この部分は鈴木先生にご担当いただき、各グループからの多種多様な意見を整理しながら、解説をしていただきました。

こうしたセッションを5回繰り返した後、最後に全体の整理と省察、そして活発な質疑応答を経て研修は終了しました。

ちなみに研修終了後、その日の夜遅くまで関係者で反省会をしました。(このあたりはIDerとしての習性かも・・・)

(3)そして振り返り

今回の研修は受講者間のディスカッションが多く、講師側から知識伝授したり情報提供したりする部分は少なかったのですが、これは講師陣が
「マネジメントに関する情報は、実際にマネジメントに関わる受講者側が多く持っているはず。」
「この研修ではディスカッションを通じて選択肢や考え方の多様性を知ってもらおう。『正解』は無いのだから。」
と考えたためです。

幸い、受講者アンケートでも「他の受講者から多くの情報を得られた」「ディスカッションから多くのことを学べた」という受講者の方が何人もいらっしゃいました。講師としてはほっとしたところです。

反面、「理論を持ち帰りたい」「正解を知りたい」という方には物足りなかったかもしれませんし、こちらも受講者アンケートの不満なご意見に現れています。

今後、このコースを改善していく予定ですが、おそらく現在のディスカッション中心のスタイルを崩すことは無いと思います。ただし、研修全体を通じて提供される情報の量と質は向上させていきたいと考えています。

また、ケースについても、もっと精緻かつリアルなものにし、時間の関係でかなり端折ってしまったマネジメントのプロセスをもっと丹念に取り上げていきたいと考えています。

今回は5つのシーンを取り上げましたが、これらシーンとシーンの間にもあるはずの重要なプロセスやタスク、意思決定は省略しています。そのため、特に実際にeラーニングのマネジメントに携わっている皆さんには「え?こんなにジャンプしちゃうの?」「もっと悩ましい意思決定があるはずなのに・・・」といった違和感があったかもしれません。こういった点については特に改善をしていきたいと考えています。

こういった改善の上で最も有益なリソースは、今回のセッションで受講者の皆さんから頂いた豊富な情報(ディスカッションでのご意見、質疑応答でのご質問、アンケート)です。私たち講師も今回の研修を通じ、皆さんからeラーニングのマネジメントとして多くのことを学ばせて頂きました。

今回の研修は私自身にとってもとても貴重な学習機会となりました。鈴木先生や根本さんとのワークや受講者の皆さんとのやりとりを通じ、自分が日頃携わっている「eラーニングのマネジメント」を見つめ直すとともに、IDerとしての仕事のしかたを学ぶ(盗む?)ことができたと感じています。

最後になりましたが、受講頂いた皆さんに、積極的にご参加いただいたことを改めて心から感謝申し上げます。
((株)東京海上日動HRA:北村 士朗)

□□□□□

以下の資料を載せました。(受講頂いた方、お待たせしました。)

*実施したセッション受講者が記入したワークシートを電子化したもの
 http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~id_magazine/data/kagawa.pdf
 http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~id_magazine/data/keita.pdf

*実施したセッションの出口アンケートのコメント
 http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~id_magazine/data/comment.pdf

*e-Learning Forum 2004 Winter(2004.12.8-9実施)の各セッションのハンズアウトダウンロード先
  http://www.elc.or.jp/forum/forum_2004winter.htm


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