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[最新]IDマガジン第72号(2018/3/10発行)

[072-01]IDマガジン 第72号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2018年3月10日━━━━
<Vol.0072> IDマガジン 第72号
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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
やっと春らしい暖かさになってきました。

どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

今回のコンテンツメニューはこちら↓
《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(68):ID の前提(病院版):同意できますか?
2. 【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ: 第12章「情意的な発達を促進する:感情的知性」
3. 【報告】第32回 まなばナイトレポート
  「カークパトリックの第4段階を大検証:OBOGは今 2018」
4. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記


[072-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(68) :ID の前提(病院版):同意できますか?

第10回日本医療教授システム学会総会で教育講演を依頼された。お題は「インストラクショナルデザイン再考」。ID最高!ではなくID再考だった。さて何をどう考え直そうか。ちょうど、大学教育を念頭に作成したワーク「IDの前提」をある病院の研修で使ったところ違和感があったので、「IDの前提(病院版)」を試作・公表することにした。『教材設計マニュアル』から『研修設計マニュアル』への展開を背景に、「IDの前提」も項目を組織での学びに見直したものが欲しいなぁ、と思っていた矢先だったので、渡りに船だったと言えよう。

しゃべり倒さないスタイルの教育講演が実現できたことで、何らかの「再考」のきっかけになったとすれば、それも嬉しい(個人ワーク+ご近所ディスカッション+全体討議で構成した)。当日映写しただけの15の問いを引用可能な形にいつ公表してくれるのか、という要望もあったので、これまた「渡りに船」、ここで広く世に問うことにしたい。(病院編)を(組織編)あるいは(研修編)と読み替えれば、医療機関以外でも使えるものになっていると思う。ぜひ、ディスカッションのネタとして使ってみてください。

(ヒゲ講師記す)

追記:ついにマニュアルシリーズ第4弾『学習設計マニュアル:「おとな」になるためのインストラクショナルデザイン』がアマゾンでの予約販売を開始しました。書店に並んだら、ぜひ一度手にとってご覧ください。

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ID の前提(病院版):同意できますか?
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個人ワーク:次の各項目に対し,〔賛成・保留・反対〕のどれかを選択し,選択理由を一言ずつメモしましょう.
セミナーの前後で〔賛成・保留・反対〕がどう変化する(した)か,確認しましょう.

〔セミナー受講前〕 → 〔セミナー受講後〕
1) 人によって学習ペースは違うが,その人にとって十分な時間をかければみんな最後には学習目標を達成し、任せられる仕事が徐々に増えていく(時間モデル)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

2)全部覚えていなくても仕事はできる。必要な情報を参照しながら、他者に助けられながら仕事をする中で、必要な知識・スキルを自然と身につけ、自分一人でできる仕事の範囲を徐々に広げていくのが学びである(経験学習)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

3)人は、情報を受ける(インプット)だけでは学べない。学習者が自ら活動して、自分なりの知識を組み立てていくのが効果的な学習方法であり、頭と身体、記憶と応用力ではそれぞれ最適な練習方法が異なる(9教授事象、構成主義)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

4)人は失敗をしてその原因を追究しようとすることで学ぶ。失敗したときにその理由を考えさせ、次に挽回のチャンスを与え、成功事例を広げていくのが、一人前になるために効果的である(事例駆動型推論)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

5)それが許されることであれば、いつ使うかわからないことを予め全部学ぶジャストインケース型よりも、必要性を感じながら直前に学ぶジャストインタイム型の研修タイミングがよい(状況学習論)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

6)教えようとすればするほど自主性を奪う結果になりかねない.親切の押し売りは避けて、自分で選択・制御させて責任をもたせ、「自分事」だ、自分がやらないと前に進まないのだと覚悟してもらうのがよい(成人学習学)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

7)良くできるベテランがうまく教えられるとは限らない。教え方の専門性を学ぶことが効果的な指導には必要(汎用性)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

8)ベテランの暗黙知は、新人が経験の積み重ねのみで同じ年月をかけて身につけるのを待つのではなく、できる限り短期間に身につけられるように形式知化して、やり方を教えてしまうのが良い(教育の科学化、GOLDメソッド)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

9) 学習支援に役立つ基礎理論や他者の実践ノウハウは,適材適所で何でも真似して活用してよい(折衷主義)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

10) 学習の評価は、総学習時間数(プロセス)ではなく,学習成果で行うべきである(履修主義でなく習得主義)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

11) 到達すべき目標をすでにクリアしていることが確認できた者には、研修なしで仕事を担当させてよい(事前テスト)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

12) 大人相手の教育者の責任は、最低合格条件を学習者に明示して複数回のチャンスを与え、一人でできるように導くことであり、各学習者が実際にそこに到達するかどうかの責任を負うことはできない(学習者制御)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

13) 教える努力がなされたことではなく、学びが成立したときに初めて「教えた」とみなす。「教えたつもり」と「教えた」を区別することが教育改善の第一歩である(成功的教育観)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

14) やる気のない学習者を放置せず、その気にさせようと工夫することは、大人相手の教育担当者の責任範囲にも含まれる(動機づけ設計、ARCSモデル)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:

15) 大人相手の教育を小学校のようにしてはいけない。学習方法もやる気も自分で選択・制御させて、学ぶ責任は自分にあることを明らかに伝えるのがよい(自己主導学習)
〔賛成・保留・反対〕→〔賛成・保留・反対〕メモ:


[072-03]【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ:第12章「情意的な発達を促進する:感情的知性」(バーバラ・A・ビチェルマイヤー ほか)

第3部では、インストラクションの4つの異なる成果についての理論を扱っています。この4つの異なる成果のうち、第12章では、「感情的な発達」について扱っています。

ここで扱う「感情」とは、ブルームの3つの学習領域のうちの情意領域の基本要素のひとつとして位置づけられています。感情的知能(emotional intelligence)は、それが発達することによって、公正さ、平等性等の社会制度の維持に貢献でき、麻薬や暴力などの社会問題に対応できるなど、社会の中でよりよく生きていくことにつながるという点で、理知的知性(intellectual  intelligence)よりも、より重要であるとしています。

感情学習は、認知学習を促進させるためにも重要であるとされています。その理由として、感情欠落は合理性を阻害するため、合理的思考を習得するためにも、感情知能の発達が不可欠だというわけです。つまり、これまでの「感情VS認知」という二元論から感情&認知が相互に作用し統合されることがよりよい学びにつながるのだという主張だと理解できます。

ここでいう感情的知能の具体としては、自分の感情状態の理解・表示・制御、さらに他人の感情状態の理解・制御等を指しています。そして、このような感情的知能の発達のための5つの普遍的教授原理として、「物語を使うこと(課題中心の原理)」「感情表現の言語を教えること(活性化の原理)」「感情的知能のスキルのモデルを示すこと(例示の原理)」「感情を扱う時間を確保すること(応用の原理)」「能動的で統合的な経験を与えること(統合の原理)」が示されています。

ただし、これらはあくまで理想論であり、感情的知能発達のためには、個々のばらつきや状況に応じる注意深さが必要だとして、普遍原理と併せて「感情的知能発達のための状況依存原理」の視点を持つことが重要であるとしています。状況依存を理解する上では、感情的発達に影響を与える「内的要因」と「外的要因」があります。内的要因には、「感情の強さに性格が影響すること」「脳の成熟が感情的経験を蓄積する能力に影響すること」の2つが重要なポイントとして挙げられています。また、外的要因については、親が肯定的か否定的か等、家庭内の状況などに影響されるため、教師ができることには限界があることを理解した上で、対応することの大切さが述べられています。

以上のような全体を通して、個人的に印象的だったのは、やはりなのは「感情VS認知」のようにばらばらに捉えるのではなく、「感情&認知の統合」という点、つまり、よりよい認知的な学びを促進させるために、学習者の感情に焦点を当てていくことが重要だという点です。これを理解すれば、正解にたどり着けない学習者に罵声を浴びせたりする教師がいなくなり、学習者が楽しくおもしろく学ぶために努力する教師が増えることを願うばかりです。

(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士後期課程 菊内由貴)


[072-04]【報告】第32回まなばナイトレポート「カークパトリックの第4段階を大検証:OBOGは今 2018」

第32回まなばナイト@東京は、いつものように各自飲み物を手に和やかに始まりました。

今回のテーマは

「カークパトリックの第4段階を大検証:OBOGは今 2018」

ということで、鈴木専攻長のご挨拶の後、3名の教授システム学専攻OB・OGが、職場でどのようにID視点を活用しているかを具体的にご報告下さいました。

■ご発表者1:荒井 直美 さん (7期生)
 2014年熊本大学大学院教授システム学専攻博士前期課程修了
 KKRシミュレーション・ラボセンターラボマネージャー、虎の門病院看護師長
 熊本大学 教授システム学研究センター(RiCS) 連携研究員

ファーストスピーカーの荒井さんは、冒頭で、このまなばナイトでのご発表について「修了生コンピテンシーのひとつなのだ」と改めて意義を述べられました。確かに、教授システム学専攻では修了したOB・OGはいつも惜しみなく事例紹介をされています。まだ在学中の私は、自分がまさに学んでいる内容を先輩が実現されている姿を見て、モチベーションアップや学習のヒントにさせてもらえます。

荒井さんは、手技の医療研修を扱うセンターで看護師長を務めていらっしゃる方で、「ガニェの学習成果の5分類」を日常的に活用することで、学習目標に合った教育を実践できている、と振り返られました。

「いつもできているわけではありませんが」と謙遜されながらも、「根拠が言える強みがある」と、その手ごたえを紹介されました。
■ご発表者2:荒木 恵 さん(9期生)
 2016年熊本大学大学院教授システム学専攻博士前期課程修了
 リープ株式会社 取締役/人材のパフォーマンス評価を通じて企業の生産性向上の支援をしている。
 熊本大学 教授システム学研究センター(RiCS) 連携研究員

教育戦略支援を行う企業の取締役である荒木さんは、測りづらいところをルーブリック化したり、指標を一緒に作ったりといったオーダーが増えているそうで、修了後にIDがビジネス上の「武器」になっていらっしゃると感じました。

修士論文を検索してお問合せ頂くケースもあるそうですから、現場で模索されているお客様も少なくないのでしょう。売上グラフは大変好調な推移を描いていました。

■ご発表者3:宮原 俊之 さん(1期生)
 2008年3月熊本大学大学院教授システム学専攻修士課程修了
 2011年3月熊本大学大学院教授システム学専攻博士後期課程修了
 帝京大学 高等教育開発センター主任 教育方法研究支援室長 准教授
 熊本大学大学院 教授システム学専攻 非常勤講師
 明治大学 兼任講師
 ※2006年4月教授システム学専攻入学時は、明治大学の専任職員でした。

教授システム学専攻でも教鞭をとられる大学教員の宮原さんは、職員時代に大変苦労して現場にID視点を持ち込まれたご様子でした。
IDが浸透していない職場で孤軍奮闘され、徐々に「宮原さんが仰るなら」と周囲の理解を得られていったと伺い、私はそのご苦労が報われた瞬間を思って胸が熱くなりました。
その後は教員へとキャリアチェンジされたとのことで、どのように後輩職員に継承していくかについても事例をご紹介頂きました。

発表後は、3つのグループに分かれてグループワークを行いました。
グループワークでは、テーブル担当となった発表者に率直な質問をしたり、他2名の発表者への質問をまとめたりしました。
グループワーク後にまとめた質問を発表者へぶつけると、「本音の回答」を頂けました。

・IDを知らない人にも、課題への解決法のひとつとして、適宜IDの手法を提示してきた。
・修了前からキャリアチェンジするつもりだったが、入学して独立に至った。
・現場でIDを実践していく中で、大変じゃないことなんてなかった。
・・・etc.

ここに書ききれない情報や示唆をたくさん頂け、2時間半が本当にあっという間でした。こんなに濃い時間を、しかもワンコインで過ごせるので「やっぱりお得だ!」と感じた第32回まなばナイト@東京でした。

また参加します!

(熊本大学大学院教授システム学専攻 博士前期課程 竹口 恵理子)

写真入りのレポートはまなばナイトのサイトをご覧ください。
http://www.manabanight.com/info/manabanight32report

★次年度は、以下の予定で開催いたします。
第33回 2018年6月16日(土) Tokyo
第34回 2018年8月25日(土) Nagoya
第35回 2018年10月13日(土) Tokyo
第36回 2018年12月8日(土) Tokyo
第37回 2019年2月9日(土) Tokyo

各回のテーマや登壇者など、最新情報は以下に随時アップしていきます。
http://www.manabanight.com/

(まなばナイト実行委員・熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 加地正典)


[072-05]【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2018/3~2018/5

2018/03/15(木) ~ 2018/03/16(金)
大学教員向けワークショップ「インストラクショナルデザインを活用した授業改善」@佐賀大学
2018/05/12(土)
教育システム情報学会研究会「学習環境デザインと実践のモデル/Learning Analytics/医療・看護・福祉における先進的ICT利用/一般」@東京工芸大学(東京,中野) (予定)
2018/05/27(日)
日本教育工学会研究会「高等教育における学習支援・学習環境・FD・SD/一般」@関西大学


[072-06]★ 編集後記

この冬は、大雪の日が多かったですね。私が住んでいるところは、普段は年に1回雪が降るか降らないかという場所なのに、今年は3回ほど雪が積もってびっくりしました。桜の開花が待ち遠しい今日この頃です。

(第72号編集担当:高橋暁子)

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編 集 編集長:鈴木 克明
ID マガジン編集委員:根本淳子・市川尚・高橋暁子・石田百合子・竹岡篤永
発 行 熊本大学大学院社会文化科学研究科  教授システム学専攻同窓会
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