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[最新]IDマガジン第75号(2018/10/9発行)

[075-01]IDマガジン 第75号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2018年10月03日━━━━
<Vol.0075> IDマガジン 第75号
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皆様、いつもIDマガジンのご愛読ありがとうございます。
秋の気配が深まってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今回も、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。
今回のコンテンツメニューはこちら↓
《 Contents 》
1. 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(71):天災続きの夏の終わりに
2. 【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ: 第16章「学習オブジェクトと教授理論」
3. 【報告】第35回まなばナイト@名古屋「教育現場での実践と工夫 〜教育工学の視点での見直し〜」
4. 【ご案内】第36回まなばナイト 10/13(土)東京「学会ことはじめ」
5. 【イベント】その他、近々行われるイベントは?
★ 編集後記


[075-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(71) :天災続きの夏の終わりに

2018年は台風の当たり年に加えて、大阪や北海道での地震もあり、天災続きでした。ヒゲ講師は「鈍感ぶり」をフルに発揮し、地震も知らずに朝まで寝てたり(その時、札幌に居ました)、「昨晩の風はすごかったですね」に「そうだったんだ、まったくわからなかった」と答えて驚かれたり、というありさまでした。毎晩の目標として、「よく眠れて次の朝に頭がすっきりしていること」を掲げ、行き過ぎず足りな過ぎずの適量を追及して精進している賜物ではありますが、身に危険が迫っていても気づかないのでは困ります。当面の解決策としては、できるだけ誰かと一緒に居るようにする、ということぐらいしか思いつかないのですが・・・。

7月の末にいつもとは逆の向きからやってきた台風12号には驚きました。それ続いて東日本をかすって通っていった13号で雨風が強まる中、ログハウス外壁のペンキ塗りを強行、しようと思ってもそれは無理で、窓掃除を代わりに決行(おかげさまで景色がキレイになりました)。台風一過でペンキ塗りを完了し、韓国に旅立ちました。ICOME2018で訪れた韓国では、猛暑の中、開催地淸州を目指して(少し遠回りして)鉄道旅行を初体験。後ろ向き固定座席のヨーロッパ式新幹線は乗り心地が悪い、ということも初体験しました。韓国の後でセミナー講師として招かれていた名古屋では、講師が名古屋に到着しているのに警報が(愛知県のどこかで)解除されないという理由で中止に。台風20号と安全第一の規則のおかげで「何も予定がない日」というプレゼントをいただきました(でも12月にリスケされましたが・・・)。

9月の頭には、北海道を襲った台風21号でJSISE全国大会1日目には強風になぎ倒された自転車の列を見ながら帰路につき、2日目には大きな倒木を乗り越えての会場入り、無事に懇親会を終えてホテルに戻ったら今度は地震。JSISE3日目は中止になり、新千歳空港閉鎖で帰路につけない人が続出。ブラックアウトで「復旧には1週間程度」とラジオで聞いたと大騒ぎに。函館で開催予定だったJSET-AECT共催の国際研究シンポも中止を余儀なくされるも、対策本部での対応に備えて(丘珠ー函館の道内便が通常運行であったことに恵まれて予定通り)函館入り。函館も停電でしたがその日の夜には湯の川エリアが復旧(さすが日本の技術力)。夕食はカップ麺でしたが、9階の部屋まで海外ゲストに階段で歩いてもらわずにすみました。公式行事は中止ながらもアメリカからのVIP4名とスタッフを兼ねていた教員・学生との親密な時間をその場で再設計。まじめな部分を1日に縮めてコンパクトに開催している間に、翌々日には市電も営業再開し、五稜郭タワーや函館山、北方民族博物館などの見学も実現できたことは奇跡的に恵まれた幸運でした。
その後、ネパール出張から戻ってすぐに出向いたJSET全国大会@仙台では、もう何もないだろうと思いきや、またもや台風24号が接近。JSETは昨年も松江で台風による2日目中止で大変でしたが、今年は中止には至らず、帰路を気にして早めに帰った人はいたものの、予定通り何とか終了(参加者は例年通りの1000人)。出国当日に仙台ー東京ー成田空港を移動予定だったAECT会長も、台風が予定通りに早めに通り抜けてくれたので、予定通り帰路につけた、という綱渡り的な幸運でした。

いやぁ、この夏はいろいろありましたね。大変な思いをされた方々も多かったこととお察しし、お見舞い申し上げます。でも今後とも、地球温暖化の影響もあり、天災が続くのかもしれません。備えあれば憂いなし。難局を何とかお互いに乗り越えて、その場で再設計しながら、与件の中での最善を柔軟に求めていくことが大事、無理は禁物、ということを学ばせてもらいました。前例主義やウオーターフォールモデルでは、これだけ豹変する環境でベストを得ることは難しい。アジャイルにオンザフライで切り抜けて、精一杯、楽しく過ごしましょう。
読者の皆様も、どうぞご自愛くださいませ。

(ヒゲ講師記す)


[075-03]【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ: 第16章「学習オブジェクトと教授理論」(デービッド・A・ワイリー)

この章では、教授を構築する基本単位であり、再利用可能な構成要素である「学習オブジェクト」(Learning Object;LO)の利用について述べています。LOは、「個別に指定可能な内容のまとまりであり、さまざまな教授シナリオに再利用できるもの」です。基本単位となる部品(LO)の組み合わせで教授を構築するという考え方です。 eラーニングコースでコンテンツや学習活動を配置する様子がわかりやすいと思います。LOはデジタルとは限りませんが、共有・修正・再利用すると考えると、デジタルの方が適していると言えます。

LOについては、次の3種類に分けて議論するとよいとワイリーは述べています。
(1)内容オブジェクト:自己完結した情報のまとまりのことで、情報は、文字、画像、音声、動画として提供されます。たとえば教材の解説部分(コンテンツ)が相当します。
(2)方略オブジェクト:純粋にロジックだけで、教授の手続きやプロセス、パターンを含みます。たとえば、内容の提示方法、練習やフィードバックの方法などです。テンプレートで提供される場合や、コンピュータのアルゴリズムとして実装されるものまであります。
(3)談話オブジェクト:学習者間のインタラクションに足場かけを行うものです。内容の作成や追加を行うのは学習者です。たとえば、Wikiや掲示板などが該当します。

これら3種類のLOは、明確に切り分けられません。学習目標到達に向けて内容が構成されますので、内容オブジェクトには何らかの方略が入ってくる方が自然です。また、LOの留意点として、仕様(規定の厳格さ)、範囲(粒度,LOの大きさ)、系列(LO間やLO内の系列)が示されています。これらは、再利用性、自動化、学習効果に影響します。

LOの仕様(作り方)を厳格に定め,構造化されている方が、コンピュータによる自動処理に向きます。LOの定義は広く、教授内容に関わるものはすべて内容オブジェクトと見なせます。すべてを許容すると、内容の構造をあらかじめ想定できないため、自動処理が難しくなります。内容を構造化した最たる例は、IDマガジン第5号で紹介した「教授トランザクション理論」です。コンピュータ上の学習環境に実装された方略オブジェクト(アルゴリズム)によって、厳格な仕様に基づいて作成された内容オブジェクト(データ)が制御され、教授方略に従った内容の提示を実現しています。方略をそのままに内容を入れ替えることも簡単にできます。一方で、厳格な内容オブジェクトは、表現に大きな制約を受けます。談話オブジェクトの場合? ??同様で、協同議論支援ツールなどで特定の発言(主張や論拠など)を順序に従って応答させるのは,構造化されている例になります。

LOの範囲(粒度)については、「再利用性のパラドックス」があります。学習オブジェクト単体の学習効果はその再利用性に反比例するというものです。一般に再利用性を高めるには粒度を細かくしたり、できるだけ文脈から切り離したりすることが求められます。しかしながら、1つ1つの内容を独立させず、教授の文脈にあわせて各内容を深く関連づけながら説明した方が、学習者にとってはわかりやすくなります。ワイリーは、再利用への犠牲はほどほどに効果をある程度優先するあたりがねらい目であると述べています。

LOの系列については、たとえば内容オブジェクトをどのような順序で示すか、すなわち系列化の問題になり、精緻化理論や前提条件などが関係してきます。考えなしにLOを配置しても、学習効果は高まりません。

教授をLOの観点で捉えると、特に再利用性や、自動化可能性を考慮した議論が可能になります。教育のオープン化の流れもあり、リソースを共有・修正・再利用可能にしていくことは今後ますます重要になります。また、できるだけ自動化していくことも、効率化につながります。ワイリーは、言語・慣習・文化に適合させるローカライズの重要性を強調しています。なお、別の書籍となりますが「インストラクショナルデザインとテクノロジ」(鈴木克明・合田美子監訳、北大路書房、2013)の第30章に学習オブジェクトの解説がありますので、併読をおすすめします。

(岩手県立大学 市川 尚)


[075-04]【報告】第35回まなばナイトレポート 「教育現場での実践と工夫〜教育工学の視点での見直し〜」

第35回まなばナイトは『教育現場での実践と工夫 〜教育工学の視点での見直し〜』と題して、工業高校や看護大学で教壇に立つ方をおふたり(岡本 華枝さん、河合 英光さん)をお迎えし、教育工学を取り入れて創意工夫をされている授業などの実践事例を具体的にお話ししていただく場として平成30年8月25日(土)に開催しました。

まず、オープニングとして熊本大学教授システム学研究センター センター長兼熊本大学大学院システム学専攻 前期専攻長鈴木克明教授から「参加のみなさんには大勢集まっていただき、ありがとうございます。まなばナイトは飲み会です。楽しく飲んで、忘れてしまいそうなことはメモして、明日から使える知識を持って帰っていただければと思います。」とのご挨拶をいただきました。次に、乾杯のご発声を熊本大学教授システム学専攻 非常勤講師 柴田善幸先生からいただきました。

スピーカーの話題提供の前に、参加者同士の親睦を深めるため「日頃の人材育成での悩み共有」として、様々な背景の皆様のご苦労を共有する時間を設けました。この時間だけでも熱く盛り上がっており、会場内の熱気はグングンと上がっていくのが分かりました。

約10分間の親睦後に、本題の話題提供に入りました。話題は、教壇に立つ先生方がどのような創意工夫を交えて授業を進めているのかといった視点でお話をしていただきました。

1人目のスピーカーは、岡本華枝さんです。岡本さんは、看護師として働かれていましたが看護教育にご関心を持たれ、看護大学で講師をされている方です。

岡本さんの話題では、看護大学の授業で「GOLD METHOD」を用いて授業や実習を工夫されていることの発表でした。看護教育では、看護実習としてそれぞれの患者さんに対していろいろなことを考え、いろいろなことを実施しなければならず、その学びのためには「学びの内容をスクリプト化」することで『学びの見える化』が効率的かつ効果的であるとお話をしていただきました。この考え方は、看護教育だけでなく企業内の研修などにも使えるため、ぜひ活用してみてくださいとのことでした。

2人目のスピーカーは、河合英光さんです。河合さんは、一般企業に勤められた後に工業高校の教諭となられ、企業でのご経験や自己研鑽を進められ新たな視点での授業設計に取り組まれている方です。

河合さんの話題では、企業人から教諭になった当初は成績をつけることに不安があったため、様々な勉強会などに参加して「パフォーマンス課題」や「ルーブリック評価」などを用いた授業設計を行った内容を発表していただきました。どのような学びでも目標に到達しているかが大事であり、ルーブリックでの評価を行うことでリアルな文脈となり、物事に対して学生が論理的思考をできるようになったとのことでした。

スピーカーからの話題提供後は、参加者が自所属などで受け持つ研修などの学びをどのように改善していくかについてディスカッションをしていただきました。その中では、同じ看護師資格を持つ方からは、アセスメント能力が低い看護師がいた場合にGOLD METHODを使うことで、状況に合わせた教育ができるのではないかなどの意見が上がっていました。また、ルーブリック評価については3割くらいの方が使用されており、適正な評価のためにもルーブリックそのものを学生に見せるべきであることや、不合格者を出さないためにも学生にルーブリックの項目を作ってもらうのも一つの手段であるとのお話がありました。

クロージングは、鈴木克明先生からお言葉をいただきました。

お二人とも熊本大学大学院教授システム学専攻の出身ではないが、インストラクショナルデザインについて学んでおられ、とても頑張っておられる。次回は、当専攻同窓会からのスピーカーを期待している。

医療者の教育では自分たちの経験をなぞらせたいという思いを感じることがある。しかし、それは非効率的であり、であればスクリプト(枠)として教えたほうが良いとの考えでGOLD METHODが開発された。このGOLD METHODは、日本医療教授システム学会代表理事の池上敬一先生が開発した理論である。レストランスクリプトという言葉があるが、西洋料理を食べに行くと食事の順番があり次に出てくるものが予測ができることがスクリプトである。新人の医療者もスクリプトを用いて教育を進めておけば、急変するかもしれないという予測と急変した場合の対応ができる人を育てることができる。

そして、基本的にルーブリックは嫌いです。なぜなら、チェックリストを先に作るべきであって、一人で良い成績を取れる学生には自分で頑張ってもらい、芳しくない学生の成績をチェックリストで可視化をして努力のポイントを見せることがインストラクショナルデザインの考え方であり、この底上げの技術としてチェックリストを作って欲しい。

参加者の皆さんには、お二人のお話を参考にされてぜひ引き続き尽力してください。とのお言葉をいただきました。

中部地方で5回目のまなばナイトとなりました。年に1回のことですが5回まで続けられたのも、多くの方のご支援ご協力、そして元気をいただいているからです。今回もあっという間の時間が流れ、参加の皆さんからは楽しかった、勉強になったとのお言葉を頂戴することができました。心から御礼申し上げます。中部地方では、夏のまなばナイト、冬の人材育成事例検討会が定番のイベントとして定着してきました。人材育成事例検討会は、平成30年12月1日(土)に日本福祉大学東海キャンパスでの開催が決まっています。今後、SNSなどでアナウンスしていきますので、ご検討をよろしくお願いします。

猛暑が続く名古屋ですが、8月25日は熱い1日でした。次回もより良い会を求めて企画していきますのでご期待ください。ありがとうございました。

(熊本大学大学院教授システム学専攻同窓生 大石 奨)

○写真入りレポートは以下をご覧ください。
http://www.manabanight.com/info/manabanight35report


[075-05]【ご案内】第36回まなばナイト(東京)

第36回 まなばナイト@東京
「学会ことはじめ」

日時:2018年10月13日(土)17:00-19:30(16:45より受付)
場所:東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター 3F

今回は、JSiSEやJSETで発表された方々のリフレクションとして、発表の際に頂いたコメント等で得た気づきを参加者の方々にシェアして頂きたいと思います。
是非みなさまが得た知見をシェアしてください。また、当日学会に参加されなかった方々で発表聞きたかった!発表に色々かぶってて行けなかった!という方々にも気になる内容を確認できるチャンスです!!鈴木先生もご発表資料をご持参くださいます。
遠方の方の資料も預かり、こちらで展示させて頂きます。
ご発表者と参加者を広く募集させて頂きます!奮ってご参加ください!!
(続きは→http://www.manabanight.com/event/manabanight36

各回のテーマや登壇者など、最新情報は以下に随時アップしていきます。
http://www.manabanight.com/
https://www.facebook.com/manabanight/


[075-06]【イベント】その他、近々行われるイベントは? 2018/10~2018/12

2018/10/14(日)
日本教育工学会研究会「高等教育における学修評価/一般」@日本福祉大学
2018/10/27(土)
教育システム情報学会研究会「システマティックなスキル向上支援環境/一般」@徳島大学
2018/11/11(土)
教授システム学専攻オープンスクール@キャンパスイノベーションセンター
2018/12/08(土)
日本教育工学会研究会「学習データ分析/一般」@早稲田大学


[075-07]★ 編集後記

日本教育工学会全国大会@東北大学に参加してきました。以前はいろいろな発表を聴いて新しい知識を持ち帰ることができましたが、ここ最近の大会は、ほとんどが打ち合わせになってしまっているのが残念です。もっと学びの場として活用しなければいけませんね。
(第75号編集担当:市川 尚)

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編 集 編集長:鈴木 克明
ID マガジン編集委員:根本淳子・市川尚・高橋暁子・石田百合子・竹岡篤永・仲道雅輝・桑原千幸
発 行 熊本大学大学院社会文化科学研究科  教授システム学専攻同窓会
http://www.gsis.jp/
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