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[010-06]第6弾 ランダ方式  Instructional Design

関西地方を中心とした教育工学を専門とする若手研究者(筆者の前任校は京都外国語大学でした)らが立ち上げたeel研究会(http://www.murakami-lab.org/masayuki/eel/)において、ID理論に関する通称GreenBook(みどり本)と呼ばれる”Instructional- design theories and models.”のVolume2を題材に勉強会を開いてきました。
今回はその中で第15章のLandamatics Instructional Design(ランダ方式)について紹介します。
<ランダ方式とは>

現代の情報化社会においては、知識の変化はとても早いので、今日学んだことがすぐに古くなり、使うことができなくなってしまうということが一般的によく言われるようになってきました。
そのような状況の中で、どのように知識を獲得していけばいいのか、すでにそうした効果的な知識の獲得と適用を学習してきている科学的または実践的活動のフィールドにおける専門家は、様々な種類の知識を学び、利用するために同じ認知の働きとプロセスを使っているといわれています。異なる内容においても、どんな状況においても「考える」方法、また一般的な論理構造の定義を明確にするという方法など、「高次の思考力」が求められています。このような「高次の思考力」をどのように教えるかというのがLev N. Landaにより提唱されているLandamatics Instructional Design(ランダ方式)です。

ランダ方式においては、「考え方」を習得するための「方法」として、2点が挙げられています。
(A)問題を解決したり、タスクを実行するための一連の活動 (活動のシステムとしての方法(Ma))
(B)実行される行動を導くための指示 (指導のシステムとしての方法(Mp))
新しい問題を解いたり、新しいタスクを実行したりするための方法を探すさい、まずはじめにMaを発見し、それをMpに変換すると考えられています。
ランダ方式は目的のある明確な教授方法を通して一般な定義、概念、考えるプロセスを形成し、考える方法(MaもMpも)を身に着けるアプローチとして開発されました。
<ランダ方式での実践例>

ランダ方式には定式化された手法があります。以下では、例として直角三角形の定義について学ぶときにランダ方式ではどのような学習(活動)が行われるかをまとめます。
なおこのプロセスはランダ方式では「ストラテジ1(導かれた発見)」と言われます。文章を見ると長いように見えますが、実際に行ったところでは15分から20分以下であるということです。

1.生徒が独自に直角三角形の概念を発見する
2.三角形にその概念を表す名前をつける(科学において概念を示すために使われる言葉)
3.論理的に正しい概念の定義を組み立てる
4.概念を適用するため知的システム(Ma)に関する独自の発見
5.発見方法(Mp)の形成
6.練習、方法の適用に関する学習
7.方法の指導(Mp)の内化
8.方法の働き(Ma)の自動化とそれの完璧なマスターを保証する

上記の8ステップののうち、4から8に関してがランダ方式に特有のもので、指導目標とそれに対する活動が示されています。

4.概念を適用するため知的システム(Ma)に関する独自の発見
-指導目標4:定義された類型に所属するかしないかを判断するタスクを行うことで、生徒が組み立てた概念、その定義を含む心の中の活動(Ma)を発見させ、気づかせる。
教育的活動:生徒に決定させるためには三角形であっても、直角三角形であっても定義を確認するために頭の中で何をすべきかを聞く。本例においては、生徒は三角形が直角を持っている かどうかをチェックしなければいけないということを言う。

5.発見方法(Mp)の形成
-指導目標5:生徒に指導のシステム(Mp)に対応した明確な形式化をさせる
教育的活動:(1)判断の詳細な方法を形式化させることについて聞く。(たと
えば、直角三角形の定義をどのように使うか、また自分たち以外の人が与えられた三
角形が直角三角形かそうでないかを決定するためには何をすべきかということを聞
く)
      (2)もし生徒が方法を正しく形式化すれば、次の指導目標に進むことができる。もし違えば三角形が直角か直角でないかを気づかせるために活動の方法(Mp)をどのように形成するかを以下のような方法を実施させることで彼らに説明する。

   [1]直角三角形の定義を参照し、その特徴的な側面(90度を持っていること)を抜き出す。
   [2]自身でこの特徴を与えられた三角形に重ね合わせる、そしてそれが90度を持つかどうかをチェックする。
   [3]以下のルールに従って、結論を導く
    (a)もし三角形が90度を持つなら、直角三角形である。 (b)もし90度を持たないなら、それは直角三角形ではない。
   [4]形式化された方法(アルゴリズム)を黒板に書かせるか、他のメディアを利用して示させる(準備の必要あり)。

6.練習、方法の適用に関する学習
  -指導目標6:形式化された方法(Mp)を適用する練習を行わせる
   教育的活動:(1)生徒に今から行われるタスクが、他の三角形において直角三角形に気づくために形式化された方法を適用する練習をするためにあるということを教える。
         (2)生徒に様々な三角形を見せ、直角三角形とそうでないものとを区別させる。
         (3)step-by-stepでその方法を使うべきであることを説明する。はじめの指示を見て言われていることをする、そして次の指示を見て行うなど。

7.方法の指導(Mp)の内化
  -指導目標7:特別な練習によって方法を内化させる、そして、完全にマスターさせる
  教育的活動:(1)生徒にもう黒板での指導(教示)は必要ないこと、生徒たちで置き換えることができることを教える。
        (2)黒板上のインストラクションを消し、生徒にあと2、3の三角形を見せることを言う。彼らはそのうちのどちらかが直角三角形であるか、黒板上のインストラクションの代わりに、彼ら自身のインストラクションで決めさせることを伝える。

8.方法の働き(Ma)の自動化とそれの完璧なマスターを保証する。
  -指導目標8:方法の知的操作に関する効果的自動化
  教育的活動:(1)生徒にさらに自己インストラクションでさえも必要ではないこと、それは彼らが直角三角形に気づくにはどうすればよいかをすでに知っているからだということを伝える。
        (2)彼らが直角三角形を見つけなければならない最後の組み合わせを見せる。自己インストラクションなしにできるだけ早く見つけるように言う。生徒は課題を簡単にやり、早く直角三角形を見つけることができる。

<その他のストラテジ>
ストラテジ1というのは効果があると思われつつも、多少の時間がかかります。そのため、完全な時間が無いときにはストラテジ2(解説教授)を用いることがあります。ストラテジ2においては、上記の例で言えば、生徒に直角三角形のコンセプトを発見させることのかわりに、教師がその定義づけをし、すべて知識を整理した形で(適切な絵と練習をもって)生徒に教えることになります。
またランダ方式をより確実なものとするために、両者を組み合わせたストラテジ3(混合ストラテジ)も存在します。これはどのトピックをどちらのストラテジによって教えるかは与えられた時間の中で、教師の目的、各方法に関連する利益によって決定されます。
<抽象化の方法>
ただ上記した例は直角三角形を選択するという学習のときのみに当てはまるのであって、その方式がそのままその他の状況(たとえばひし形などの図形ではどうか、数学的な問題以外のときではどうかなど)に当てはまるのかというと必ずしもそうではありません。他の定義にも当てはめていくことができるように、ランダ方式は論理構造を定義する段階(「90度を持っている三角形が直角三角形である」という部分)で多層的に抽象化が図られています。
これについては、そのプロセスがあまりに長いので本メールにはまとめることができませんが、興味のある方は是非原文にあたってみてください。

(寺嶋浩介 長崎大学)


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