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[007-05]第3弾 行動による学習(Leaning by Doing)

今回はシリーズID理論紹介の第三弾、”Instructional-design theories and models.”のVolume2の第8章で紹介されている、R.C.Schankの”Goal-Based Scenarios”(以下、GBS)についてご紹介します。

GBSは、シミュレーション型教材を設計するためのID設計理論です。特徴として、現実的な場面を設定し、学習者が必要とするスキルや関連する知識を活用しながら問題を解決できるように設計することが挙げられます。この理論では、単に知識の習得をするだけではなく、応用力がつけられることを目指しています。eLFテキスト序章でも紹介された巨匠シャンク教授がアクセンチュア企業内教育に革命をもたらした理論として有名です(山崎,2001)。

GBSでは設計に必要な要素を7つ提示しています。この要素とは、学習目標・使命・カバーストーリー・役割・シナリオ操作・リソースそしてフィードバックです。学習者には、学習者の経験に関連するトーリーとそのストーリーの中で演じる役を与えます。学習者はストーリーの中で動機付けられた使命を果たそうとします。この過程で学習の対象となるスキルを自然と見につけていく経験が与えられるように設計されるようになっています。目標はあらかじめ設定がされていますが、学習者には直接見えません。その代わり、学習者には役割を演じるときに与えられた使命を達成しようとします。この使命を達成する中で自然と学習目標が到達しているというのがGBSの考えです。学習を成立させるために必要になるのが、シナリオ操作です。自分で考えたり、作成したり、情報を収集したりする経験が与えられることでスキルや知識の活用を促します。そして、この操作を実装するのに必要なのがフィードバックやリソースになります。必要とする情報を自分で取りにいけるようにリソースを提供しておきますが、学習者が誤った選択や失敗した時は、必要な時にフィードバックを返すようにします。

GBSはCase-Based Reasoningという学習理論に支えられています。これは、人がどのように物事を記憶し新しい問題を解決するかを示した学習理論です。現在の問題と類似した過去の問題を記憶から呼び出し、その過去の問題の解決の中から現在の問題の解決法を作り、適用するという理論です。

GBSの適用事例としてシャンク自身が描いた「大統領への助言」の日本語訳を紹介し、企業教育向けチェックリストを提案しました。(鈴木克明・根本淳子(2004.9.25)「企業内教育向けGBSチェックリストの提案」『教育工学会第20回全国大会講演論文集』 515-516. 本文URL:http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~nemoto/paper/Jset040925.pdf、チェックリストURL:http://www.et.soft.iwate-pu.ac.jp/~nemoto/paper/Jset040925add.pdf)

現在、この理論を用いた研修として12月9日に開催されるe-LearningForum2004 Winter(主催:eラーニングコンソーシアム, URL:http://www.elc.or.jp/tokushu/e-LearningForum2004_Winter.htm)でのeLF続編の試行を予定しています。どうなるかお楽しみに。なんていいながら、実は本人はかなり焦っています。

文献:
Schank, R. C., Berman, T.R., & Macpherson, K.A. (1999). Learning by Doing. In Reigeluth, C.M. (ed), Instructional-Design Theories and Models : A New Paradigm of Instructional Theory VolumeⅡ: (pp.161-181;Chapter 8). Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.

山崎将史(2001) 「eラーニング:実践的スキルの習得技法」 ダイヤモンド社

(岩手県立大学:根本 淳子)


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