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[040-03]【 特集】パフォーマンス・コンサルティング(6)パフォーマンス・コンサルティングの現在

今回はパフォーマンス・コンサルティングが現在どのような広がりを見せているのかをみていきましょう。

結論から言えば、パフォーマンス・コンサルティングは世界の人事・人材開発関係者の基本として広く浸透し、活用されています。以下はそれを示す主なエピソードです。

• Performance Consulting(1995年、邦題『パフォーマンス・コンサルティング』2007年)は、スペイン語、アラビア語、中国語、日本語に翻訳され、6万部以上売れた。
• SHRM (Society of Human Resource Management)は同書を1995年のthe book of the yearに選んだ。
• 同書の出版以降、パフォーマンス・コンサルティング、パフォーマンス改善に関連する書籍が多数出版された(拙訳『パフォーマンス・コンサルティングⅡ』参考文献参照)。
• 現在、同書はNew Classicとされ、大学や企業のL&D部門のテキストになっている。
• ASTDはロビンソン両氏の業績を高く評価し、Distinguished Contribution to Workplace Learning and Performanceという賞を贈った(1999年)。
• ASTDの国際カンファレンスは、2000~2003年の4年間にわたりPerformance Consulting(2004年以降Performance Improvement)というセッショントラックを設定した。
• ISPIやASTDは、2002年頃からHPTやHPIの実践家に対し、それぞれCPT(Certified Performance Technologist)、CPLP (Certified Performance and Learning Professional)といった資格認定を始めた。
• 2000年前後から、ISPIやASTDのカンファレンスで、パフォーマンス・コンサルティングやHPIに関連するモデル、実践事例が毎年発表されている。
• 今年2011年のASTDでは、韓国の現代自動車のパフォーマンス・コンサルティング事例が、オハイオ州立大学と共同で発表された。

上記で、パフォーマンス・コンサルティング、HPT、HPI(Human Performance Improvement)と並んだので、少し補足しましょう。時系列で見れば、ISPIのHPT→ロビンソン夫妻のパフォーマンス・コンサルティング→ASTDのHPIという流れのようです。

ISPIはHandbook of Human Performance Technologyを1992年に初版、1999年に第2版、2006年に第3版を出しており、2002年頃にHPTの原則を定義しています。ISPIではPerformance Technologyという用語は使いますが、各ハンドブックのIndex にPIやHPIはなく、ほとんど使わないようです。

ASTDのThe ASTD Training & Development Handbook(1995)第18章では、Marc RosenbergがHPTを解説しています。そして、同書のIndexではPI (Performance Improvement)という用語はありますが、HPIはありません。The ASTD Handbook of Training Design and Delivery(1999)でもIndexにHPIという用語は出てきませんが、“Leveraging Technology for Human Performance Improvement”という章があります。

初版のPerformance Consultingが出版されたのが1995年ですが、ISPI・ASTDとも上記の1999年版のハンドブックでとりあげ、Indexに掲載しています。

ASTDは2002年にHPI Essentialsを出版しました。その中で、HPI、HPT、パフォーマンス・コンサルティング、Performance Engineeringを同じ意味のものとして解説しています(同書P2)。

ちなみに、ロビンソン夫妻は、著書の中でパフォーマンス・コンサルティング、HPT、HPI、Human Performance Enhancement、Performance Engineeringは同じ領域のものだと認めています(Performance Consulting 2008、拙訳『パフォーマンス・コンサルティングⅡ』、P17)。

HPIについては不勉強なのですが、基本的な考え方はHPTやパフォーマンス・コンサルティングと同じと言えます。というのは、HPIも前回紹介したギルバートやラムラーの考え方が基盤にあるからです。微妙な違いは、ADDIEプロセスのAで行う分析プロセスの括り方やモデルの要素の網羅性にあると思います。

以上をまとめると、最近ではASTDのように比較的広義な意味合いで「パフォーマンス・コンサルティング」「HPI」を使うことが多くなっていると言えそうです。それだけ浸透してきたということですが、人によってイメージしている「パフォーマンス・コンサルティング」のプロセスや分析モデルが違うことも考えられるので、少し確認した方がよいかもしれません。

次に、パフォーマンス・コンサルタントについても少しふれておきましょう。HPI Essentials (2002)では以下のような記述があります(P2)。

「実のところ、名刺に『パフォーマンス・コンサルタント』という肩書をつけている人の多くは、本当の意味でHPIを実践していない」
「しかし、HRゼネラリスト、ODの専門家を自認している人で、本当の意味でパフォーマンス・コンサルタントという人を目にすることが多い」

上記から2000年前後の米国で、パフォーマンス・コンサルタントの実態がどのようなものだったのか、少し想像できます。このようなことが背景にあったのかどうかはわかりませんが、ASTDの認定資格CPLPを得るためには、ワークショップの受講、筆記試験、コンサルティングの実績などが必要になっているようです。

ロビンソン夫妻は、今では何千という人が「パフォーマンス・コンサルタント」の肩書をつけていると言っています(拙訳『パフォーマンス・コンサルティングⅡ』、P10)。

最後に、この連載は今回で一区切りになりますので、少し雑感を述べさせていただきます。

2007年以降、ASTDカンファレンスに毎年参加して、企業の事例発表を聞いていますが、HPIのプロセスに従った実践事例が北米だけでなく、欧州、中東、アジアと広がっている気がします(詳しくは弊社サイトのASTD報告をご参照ください)。

最近のISPIやASTDのメルマガやeマガジンでは、自分の専門を“performance improvement and instructional design ”と表記する人をよく目にします。実際に、韓国企業の人材開発担当者にはこの分野のPhDをとった人材が珍しくなく、ASTDのカンファレンスで堂々と事例発表しています。

グローバルな競争が激しくなる日本企業でも、人材開発担当者がこのふたつの領域をセットで学ぶのが当たり前になり、そういう方が世界で活躍される日が早晩来るのではないでしょうか。日本企業の若手の人材開発担当者は、ASTDなどのカンファレンスに参加し、世界各国の若い人材開発担当者がどのような目つきで学んでいるのか、自分の目で確かめることをお勧めします。

IDマガジンの読者の多くは、IDの合理的な設計思想に共感されている方だと思います。これまでの記事で、パフォーマンス・コンサルティングはそのIDの発展形ということをご理解いただけたと思います。今後は企業内で人材開発施策を設計するときに、IDだけでなく、ぜひパフォーマンス・コンサルティングもご活用いただければと思います。

浅い知識にもとづくこのシリーズが読者のみなさまにどれほどお役に立ったのか、はなはだ心許ないのですが、何らかのトピックが一助になっていれば幸いです。もしPCにご関心があれば、ぜひご連絡ください。また、不正確な記述にお気づきの場合もご一報いただけますと助かります。今後ともよろしくお願い申し上げます。

(株式会社ヒューマンパフォーマンス 鹿野尚登)
http://www.human-performance.co.jp
パフォーマンス・コンサルティング・ワークショップ 
http://www.human-performance.co.jp/article/13478992.html


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