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[064-02]【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(60) ~プレンスキーが語る教育の4指針~

マーク・プレンスキーのYouTubeビデオを見た(https://www.youtube.com/watch?v=7wowZRDx344)。

プレンスキーと言えば、『テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから』とか『ディジタルネイティヴのための近未来教室』などの翻訳本でも知られている教育工学研究者である。ディジタルネイティヴ(生まれたときからデジタルに囲まれてきた人)をデジタル移民(人生の途中からデジタルの世界に移り住んだ人)と対比させたことでも有名な人で、デジタル移民はテクノロジーを道具だと思っているけど、ネイティヴは彼らが行うすべてのことの基盤として捉えている、と違いを説明。知る人の中では、最近刊の『グリーンブックIV』の第5章「カリキュラムの新しいパラダイム」を分担執筆した人としても有名であります。

プレンスキー曰く、現在の世界はVUCA(ヴーカ)である。
VはVolativity(揮発性)。落ち着きのない性質で、移り気で、右肩上がりじゃない社会。
UはUncertainty(不確実性)。「私が教えることはすべて誤りです」と教師が発言するほど不確実なのだが、「私が教えることをすべて信じなさい」と受験では教えている(後半はひげが付け足した)。
CはComplexity(複雑性)。人口倍増世界に向かって何もかもがより複雑になっている。
AはAmbiguity(あいまいさ)。聞いたことがなかった言葉が世界を語るうえで重要になったという。例えば、Frenemy(「友を装う敵」または「ライバルと同時に友である者」)、Co-petition(連携相手が同時に競争相手でもあるような複雑な今日の市場環境を指しているキーワードの一つ)などの新語が登場している。へー、知らなかったです。

プレンスキーはビデオの中で、我々は3つのことを低く見積もりすぎていないかと警鐘を鳴らす。
その第一は若い世代。若い世代は尊敬に値する。テクノロジーという武器を駆使して大人が想像するよりも多くのことができる、という。
第二はテクノロジー自体ができること。問題側面より得られることに注目し、人類とテクノロジーの共生(Symbiosis)で頭脳をネットワーク化する一方で、人間しかできない共感や情熱を大切にしなさい、という。
第三は教育。その目的は「学ぶこと」ではなく「(何者かに)なること(becoming)」。国数社理の4本柱を脱皮して、考え、行動し、関係を構築し、達成することを効果的に行うという4本柱に変換していくべきだとする。知識の習得が目標ではなくそれを使えるようになることだ、という議論はよくあるが、その先に「学ぶことで何者かになること」を見据えろ、という。何者かになるためには共生が必要だし、社会の中での役割を見出していくことも含まれるという示唆があるのでしょう、きっと。

プレスキーは結論として、以下の4つの指針となる質問を掲げ、自身でそれに答えている。
1) よい人にどう成長させるのか?
考え、行動し、関係を構築し、達成することをデジタルの知恵で教えることだ。
2) 若い世代をどう鼓舞させるのか?
彼らを尊敬し、彼らに共感し、選択肢と挑戦的課題を与え、彼ら自身の世界を動かしていけることに信頼を寄せることだ。
3) 我々はどう教えるべきか?
学習者が自分自身の情熱に従い、良きパートナーに巡り合えるように手助けし、過去についてどう教えるかを考えるのではなく、考え、行動し、関係を構築し、達成すること、そして未来を創造することにフォーカスをあてることだ。
4) 我々はどう助けられるのか?
判断を保留して傾聴し、25歳未満の子どもたちの声をよく聞くことだ。

なるほどね。ひげ講師はそう思いました。世の中の教育は惰性でやっているものが多く、デザインされていない。だから、一度止まって何を目指して何をどう教えるのかをゼロベースで見直しましょう。そういうメッセージを発することが多い今日この頃でありますが、プレンスキーはその「目指す先」を示してくれていると感じました。ライゲルースがグリーンブックIVでカリキュラム論の分担執筆を依頼したのもこの人だからだなぁ、としみじみ思ったのでした。なるほど、そうだよなぁ。さて、何にどう取り組んでいくか、それぞれの立場で考えてみましょうね。

(ひげ講師記す)


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