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[055-02] 【連載】ヒゲ講師のID活動日誌(51) ~公開講座でオーバーヒート~

ヒゲ講師の11月は「私は講義がしたい!」という欲求を満たしてくれた。ふだんの生活では「毎週水曜日を除いて毎日が講義」という普通の大学教員のような機会には恵まれていない身の上のため、生身の人間(失礼!)を相手にして直接お話ができるというチャンスは稀である。なかでも、名古屋と大阪と東京で開催した熊本大学公開講座「インストラクショナルデザイン 入門編」には、合計120名以上の参加者を得て、各地で定員超えの部屋いっぱいの人たちに向かい、午前中いっぱいお話をさせてもらう機会を得た。IDに興味をもっていただき、有料セミナーであるのにもかかわらず参加いただいた方に、改めて感謝を申し上げたい。ご参加ありがとうございました! 参加者の皆様にとって、この講座への参加が「もう元には戻れない」と感じることができる「不可逆的(パリッシュの言葉を使えば美学的)経験」であったことを祈っている。

何ですか、それって?

例えば、ヒゲ講師にとっては、9教授事象もARCSモデルも、出会って以来、頭にこびりついて離れないものとなってしまった。どんな教育実践に触れるときも(そして自分の実践を考えるときにも)、つい思い浮かべてしまう枠組みになって久しい。「Aで失敗したけど、Cについては段階的なアプローチがうまく組まれているなぁ」とか「事象4を『講義する』という手段以外でどう実現したらよいかを考えるのが改革のきっかけとなる」といった具合にである。このような、一度出会ってしまったらもう元に戻れない、不可逆的な出会いのことを、パリッシュは美学的経験と名付けた。「日常的な経験とは一線を画す、楽しめて忘れられない、時として人生を変えるような影響力を持つ洗練された経験」という最高レベルのものである。このパリッシュの学習経験の質モデルも、それをもとにしたID美学の第一原理も、ヒゲ講師にとっては「不可逆的」な出会いとなった。

覚えようとする必要はない。忘れられなくなるのだから。それが不可逆的な学びである。

そこまでの衝撃的な出会いではなかったとしても、忘れてしまうものであれば、覚えておく価値はそんなにないんだろう。使っているうちに理解が深まり、やがて、自分のものになる。そうなれば忘れはしない。それは、忘れる前にもう一度思い出すからである(これは事象9に相当する)。忘れたころに「そういえばARC何とかっていうやる気についてのモデルのことが紹介されていたっけ。ここで使えるかもしれない。さてどんなものだったかなぁ?」と資料を振り返ってもらえれば嬉しい。じわじわ浸み入る、斬新的な学びが成立すればそれで御の字だと思う(これは嘘。公開講座の狙っているレベルは不可逆的な瞬間ですが、万が一それに失敗した場合には、という「抑え」のつもりで書きました)。

IDとの出会いをより鮮烈なものに、という思いから、公開講座の内容を今年度少し改訂し、資料も更新した。出入口と効果・効率・魅力と「自ら学ぶ人を育てて自分は専門家になる」というキーメッセージの整理もより明確になった。一方で、溢れる思いが絞り切れていなかったこともあり、15ページの配布資料が18ページに膨らんだ。しかし、ふたを開けてみると一言も触れられなかったページも多くあった。オーバーヒートしてしまった、とも言えますねぇ、デザイン不足です。でも、他にもいろいろあるんですね、というIDの広がりと、「これについてもぜひ学びたい」という未達成感・継続動機への誘いであったと解釈してもらえると助かります(やっぱり触れられることに限定した資料で、しかも話す順序に並べた方が良いでしょうね、きっと・・・来年度に向けての課題とします)。

実はオーバーヒートしたのは配布資料だけでなく、ヒゲ講師自身も体調を壊してしまった。「先生は公開講座の時期になると毎年体調が悪いですね」と昨年も一緒に公開講座をやってくれた同窓生に言われたことからみると、毎年この時期はダメらしい(本人はあまり覚えていない)。まぁ季節の変わり目だし、9月から遠征続きで全国大会3連荘(そのうち2つは合宿付)に熊本合宿、それに加えて海外からの招聘者対応が2回もあり、「よくそのスケジュールで身体が持ちますね」と言われ続けているペースだから、体調を崩すのも仕方がないのかもしれない。

この11月を乗り切ってもまだ次があるので、不義理を承知の上で12月第1週の国際会議は参加を見送り、少しゆっくりすることにした。仕切り直して師走に備えさせてもらいます。関係各位の皆様、ごめんなさい。

ところで、このオーバーヒートの原因がもう一つあるのではないか、という説が浮上した。それは「講義をすること」を楽しみ過ぎて、サービス精神が高まり過ぎて、その結果として体温が若干上昇するのではないか、という新説である。まぁ懇親会で呑み過ぎて、ホテルの部屋ででかいハラを出したまま眠りにつくからだ、という従来からの説の方が依然として有力ではある。

つべこべ言わずに歳のことも考えて、少し休みなさい!
はい、そうさせていただきます。

(ヒゲ講師記す)


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