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[074-03]【ブックレビュー】GB3輪読シリーズ: 第15章「教育のドメイン理論」:学習者中心教育を可能にする到達度マッピング」 (C.・ビクター・バンダーソン ほか)

「ドメイン」「マッピング」という言葉を聞いて、みなさんは何をイメージされるでしょうか。インターネットやITに詳しい方は、「.co.jp」や「.com」といったドメインネームが頭に浮かぶのではないでしょうか。「ドメイン」とは領域のこと、「マッピング」とは地図化すること、対応づけ、分布や配置を図示することです。
教育における「ドメイン」「マッピング」とは何を指すのでしょうか。

「ドメイン」とは領域です。どのような領域かというと、教育によって発達が促される特定の能力・スキルの“ある一定のまとまり”のことを指しています。そして、「マッピング」とは、それらの能力が“連続的に向上していくさまを可視化する”ということを意味しています。
たとえば、体育の跳び箱。最初は低い段から始めて、4段、5段・・・とより高い跳び箱にチャレンジするとき、助走時のスピードを速めて、踏切後のジャンプを高く跳ぶ(もしくは手をつく位置を遠くする)ことで、より高い跳び箱をクリアすることができます。
「助走時のスピード」というドメイン、「踏切後のジャンプの高さ」というドメインが合わさって、より高く跳べる=連続的に能力が向上していくスキルを可視化できると、高い段が飛べるようになるにはどうすればいいのか、が客観化できるようになるでしょう。

第15章には「学習測定の方法」を進展させようというメッセージが込められています。
“教育の進展は教育測定と理論の両方と高い相関関係がある。学習測定法を進展させないまま、学習者の到達度に関する理論を発展させようとすることは、まったくの空論である。教育測定の進展は、学習理論の発展と切り離されてしまうと、意味をなさないデータとなる”(P.357)

さて、この章では、学習測定の方法を発展させた具体的な例として、著者の一人であるレオ・H・マクブライド博士の研究が紹介されています。本編は主人公である「レオ」がどうやって彼の研究分野である音読と表現のスキルについて「ドメイン」と「マッピング」を使っていったのか、ストーリー仕立てで展開されていきます。

レオ・H・マクブライド博士の論文のタイトルは「Toward a Domain Theory of Fluent Oral Reading with Expression (2005年Brigham Young University博士論文)」彼の研究は、Fluent Oral Reading with Expressionの頭文字を取って「FORE」プロジェクトと名づけられました。レオは、「音読教室」に通う様々な年齢層からなる学習者が、単語の発音を間違えたり、1行飛ばしてしまったり、読み直すという現象に遭遇します。しかし、学習者自身の学力は決して低いわけではありませんでした。音読において、そういった「つっかかり」がなく読めるようになるための要素とは何なのか、レオの問題関心はそこにありました。
レオは「量的ドメインマッピング(Quantitative Domain Mapping)」という手法を用いました。量的ドメインマッピングとは、“特定のドメインにおいて、段階的に難易度が上がる到達目標を連続して通りながら、どのように学習が経路に沿って進行していくのかということを説明する理論を作り出すこと”をゴールとしたデザイン理論の一つです。

この理論を用いたレオの博士号取得までの道のりは、本書を手に取ってじっくり読んでみてください。レオが「音読」を評価するときの基準を決めていくのですが(ドメインを絞り込んでいく過程もおもしろいです)彼は、最終的に4つのドメインに絞っています。それは「抑揚・区切り」「発音の正しさ」「なめらかさ」「自身・速さ」です。そして、それらは5段階で評価されています。勘のいい方はピンと来たのではありませんか?そう。これはまさに「ルーブリック」なのです。レオが決めた「ドメイン」は評価の観点、つまり規準にあたるものに見えます。

何をもって「できるようになった」と言えるのか、学習の目標は何か、学習者はどのような点に気をつければ自分のスキルが向上するのか。レオの研究は個人の成長を促し、より高いスキルを身につけようとする学習者を励ますものだと思います。それは、私たちインストラクショナルデザインの研究者が胸に抱く思いと同じです。ぜひ、第15章に注目してみてください。

(熊本大学大学院教授システム学専攻 修士5期修了 野田啓子)


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