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[007-04]サイエンス・アンド・アートの巻

………10月のある日の研究会での会話………

───eラーニングって最近よく聞くんですが、一体、eラーニングってなんですか?

んー、明確な定義はまだないんじゃないかなあ。たとえば、インター
ネットを使ったテレビ会議みたいので、高校生の数学を指導するという
のもeラーニングって呼べるでしょう。

───それもeラーニングなんですか?

なんでもeラーニングなんですよ。つまり、コンピュータとネットワー
クを使っていればなんでもeラーニングなんです。最近は、ケータイで
もネットにつながるから、コンピュータはなくてもいいわけだ。という
ことはネットワークを使った学習環境ということか。

───リアルタイムでも、一度作ったコンテンツを流すのでもいいわけ
ですね。その学習環境がデザインされているということですね。

んー、デザインされているのかねー。eラーニングは皮みたいなものだ
な。見かけね。中身がデザインされているかどうかは保証していない。
だからみんなeラーニングだっていえちゃう。たとえば、ネットワーク
上で本を指定してレポート書かせるような授業があったとしようよ。こ
れは、ネットワークを使っているのでeラーニングだけど、全然デザイ
ンされていないよね。だからデザインが大切。学習活動のデザインね。

───でも、デザインの評価って難しいですよね。

いや、簡単だ。学習活動をして、そのあとにどれだけのものが残るかで
デザインの評価ができる。

───わかりやすく伝えるってことですね。

まず理解してもらわないとね。

───説明読んでも、ちんぷんかんぷんで、どこがわからないのかす
ら、わからないってなると、もうおちこぼれ確実っていう気持ちになっ
ちゃう。

そのためには途中で確認することが必要かな。わかったか、わからない
か。これは一斉にはできないから、コンピュータを使うeラーニングの
意味が出てくる。個別対応できるからね。個別対応は実はコストがかか
るんだけどね。

───教室の授業では、あれっ?という間に置いてけぼりを食らうこと
がありますよね。

そう。大人数の教室授業はそれが致命的な欠点だ。だから学級崩壊はお
こるべくしておこっている。一斉に1時間座っているという時代ではな
いんだよ。

───でも、みんなの意見を聞けるような授業なら集まる意味はあるの
では?

でもそういう授業って少ないよね。

───それからみんなが参加するって難しい。

その点では、eラーニングの討論の方が良いね。でも、討論にもテク
ニックが必要だ。コメントの付けやすい書き方がある。全部を書かない
で、あれっと思うような所を残しておいたりね。

───そういった学習活動のデザインがインストラクショナルデザイ
ンってことですね。

討論の場のデザインは重要な課題だな。

───インストラクションというと、道を造って、導いてくれるような
イメージですね。

うん、そうであってほしいね。

───ギョーザにたとえれば、ギョーザの皮がeラーニングで、中身が
インストラクショナルデザインですね。

なるほど。妙なたとえだが、わかる。

───でも、現場の教員やインストラクターたちは、自分たちの個性が
eラーニングによって消えてしまうと憤慨するかもしれませんね。

そうかね。消えてしまうような個性なら、単なる思いこみに過ぎないん
じゃないかな。インストラクショナルデザインにしたがえば、どんな下
手な先生でも70点の授業ができるということだ。残りの30点は、その
人の芸による。これを最近は「サイエンス・アンド・アート」というス
ローガンにしようと思っている。

───以前は確か60点と聞いたような気がするんですが。

いや、60点だと落第すれすれみたいなんで、最近は70点にした。サイ
エンスで70点、アートで30点だ。アートがゼロでも、70点の授業で合
格だ。

───デザインというと、むしろアートのようなものをイメージすると
思うんですが。

うむ、芸術系ではそうかもしれないけれども、エンジニアリングの世界
では、デザインというのは設計なんだよね。そこには機能も含まれてい
る。

───ルネッサンスの絵画もそうですね。絵が計算され尽くされてい
る。人間が美しく感じるにはどうすればいいかを考えてデザインされて
いる。

ああ、良いデザインを突き詰めていくと、アートにまで高まるのかもし
れない。これでサイエンスとアートの橋渡しができそうだ。

次回に続く 

(なぞのID研)


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